日本小児アレルギー学会誌
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喘息死委員会レポート2007
喘息死委員会レポート2007
坂本 龍雄赤坂 徹末廣 豊鳥居 新平西間 三馨三河 春樹松井 猛彦
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2008 年 22 巻 3 号 p. 403-416

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抄録

  2007年の喘息死調査では2006年の喘息死1例と,1991年と2003年の喘息死各1例の登録があった.厚生労働省人口動態統計によると,乳幼児の喘息死亡率の減少傾向が年長児に比べて鈍いことから,本稿では登録された5歳以下の全喘息死亡例(40例)の喘息死の背景や要因を解析した.その結果,1)男女比では男が24例,女が16例であり,そのうち1998年以降の喘息死は男で7例,女で2例であった.2)乳幼児の喘息死の平均死亡年齢は2.2歳と低く,喘息の発症から死亡までの平均期間が1.1年,初診から死亡までの平均期間が0.7年と短かった.3)心血管系・中枢神経系障害の合併率が15%と高かった.4)喘息死亡前1年間の喘息重症度では,重症者が約半数を占めていたが,重症発作に関連する既往歴(意識障害を伴なう,挿管を要するなど)と喘息死の関連は明らかではなかった.5)死亡前の薬物治療では,長期管理薬である吸入ステロイド薬・抗アレルギー薬の使用例が少なく,多くがテオフィリン製剤・β2刺激薬などを用いた対症療法に頼っていた.6)死亡場所は自病院が多かった.
  乳児喘息の診断は時に困難であり,このような場合には専門医への早期受診を促進し,喘息の早期診断と発作の十分なコントロールが求められる.また,乳幼児期の喘息死の把握はなかなか困難なところがあり,実態は不明な点が多い.喘息を疑って乳幼児を治療する場合,初発発作での喘息死がありうることを十分認識して対応する必要がある.この年齢層の死亡についてはさらに死因と病態の解明を進める必要がある.

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© 2008 日本小児アレルギー学会
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