抄録
(背景)小児のアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)は,年齢毎の身体的・社会的背景の違いが発症や臨床経過に影響を与えるとされている.さらに,アレルゲン,細菌,ストレスなどの悪化因子,スキンケアやステロイド外用不足などが複雑に絡み合い重症化を来し,入院治療を必要とする場合がある.(目的)当院で入院に至った小児ADを検討することにより,各年齢層での臨床像や悪化因子の特徴を知ることを目的とした.(方法)2003年11月から2012年11月までの10年間において,当院にて入院治療を行った重症小児AD82症例について,後方視的に検討を行った.(結果)82例のうち,乳児例が最も多く27名(33.0%)を占めていた.乳児例は,他の年齢層に較べて電解質異常や低蛋白血症の頻度が有意に多かった.乳児例では出生月が秋季で,入院月が冬季になる症例が多かった.年齢が上がるにつれてその傾向はなくなっていった.悪化を来した臨床的な要因としては,全年齢に共通してスキンケア不足やステロイド外用の処方もしくは塗布量の不足があると考えられた.医師,または保護者のステロイド外用への拒否は乳児例で多く,年齢が上がるにつれてアドヒアランスの低下により重症化した症例が多かった.(結語)適切なスキンケア指導や十分なステロイド外用による治療は,標準的な治療方針の一つであるが,小児ADの重症化を予防するためにも必須であると思われた.特に,乳児期のADは重症化することが多いため注意して治療することが重要であると思われた.