抄録
カゼイン加水分解乳 (ニューMA-1®) の長期使用により, 二次性のビオチン・カルニチン・セレン欠乏を来した1例を報告する. 症例は9か月のダウン症候群女児. 生後1か月時にCRP値の上昇と乳蛋白特異的リンパ球刺激試験陽性のため, 新生児-乳児消化管アレルギーが疑われた. 一般乳児用調製粉乳からニューMA-1®に変更し, CRP値は陰性化した. 主栄養はニューMA-1®で, 離乳食は少量の野菜のみであった. 疎な頭髪と陰部に紅斑がみられ, 尿中3-ヒドロキシイソ吉草酸濃度上昇, 低カルニチン血症と低セレン血症を認めた. ビオチン1mg/日, カルニチン200mg/日, セレン12.5μg/日の補充を行い改善した. ニューMA-1®は牛乳アレルゲン除去調製粉乳のなかで唯一CODEX推奨量のカルニチン (1.2mg/100kcal以上) を含むとされるが, 添加ではなく成分由来であり含有が保証されているわけではない. 基礎疾患を有する児に, 必須栄養素が含まれていない牛乳アレルゲン除去調製粉乳を投与する場合は, より慎重に欠乏症をきたさないような対策を行うことが必要である.