日本小児アレルギー学会誌
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ワークショップ2  アトピー性皮膚炎治療の素朴な疑問について考えよう
患者さんのために医師はどう連携すればよいか?
~小児科と皮膚科, 開業医と病院, 専門医と非専門医の関係~
森川 みき岡藤 郁夫福家 辰樹海老島 優子二村 昌樹村田 卓士南部 光彦
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2016 年 30 巻 1 号 p. 84-90

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抄録

近年, 乳児期の経皮感作を阻止することで, その後のアレルギーマーチの進展を防ぐことができる可能性が示唆されており, 乳児アトピー性皮膚炎の治療にかかわる医師が共通認識に立ち, それぞれの特色を生かした連携を行い, 早期に皮膚症状を改善することが重要であると考えられる. 今回われわれは, アトピー性皮膚炎診療実態調査アンケート (以下AD実態調査) より, 患者 (保護者) の受診行動および, 小児科医と皮膚科医の連携, 日本アレルギー学会認定専門医 (以下専門医) と非専門医の連携について検討した. ADについて, 他の医師への受診歴がある患者を診察した割合について質問したところ, 6割以上と回答した医師が40%だった. 小児科医の60%以上が皮膚科医への紹介経験があり, 約50%の小児科医が皮膚科医から患者を紹介されていた. また専門医は, 湿疹の悪化, 他のアレルギー疾患の合併, 患者指導の理由で, 他の小児科医や皮膚科医からの紹介を多く受けていた. さらにAD患者を1週間で50人以上診察している医師が, 他の小児科医や皮膚科医との連携の頻度が高かった. 当院での連携の経験からも, 医師が連携することで, ドクターショッピングや医療からの逸脱を防げる可能性が考えられ, 標準治療を約1か月続けても症状の改善がない場合は, 経験豊富な専門医や皮膚科医への紹介を考慮すべきと思われる. 今後は, ガイドラインなどで, どのような場合に連携をとるべきかの明確な基準についての記載が望まれる.

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© 2016 日本小児アレルギー学会
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