2017 年 31 巻 5 号 p. 721-725
成人の重症喘息治療において, 2種類の生物学的製剤, 抗IgE抗体と抗IL-5抗体が使われており, 先発の抗IgE抗体 (2009年に上市) についてはおおむね臨床現場で定着しているのに対し, 2016年に認可された抗IL-5抗体については広まる途中の段階である. 抗IgE抗体は, アレルギー疾患治療薬における最初の生物学的製剤として登場し, すべての薬剤を総動員してもコントロールできなかった成人喘息患者に対して臨床効果を発揮した. 2013年には6歳以上の小児および, より高いIgE血中濃度 (1,500IU/ml以下) に関しても適応となった. 抗IgE抗体の隠れた意義といえるのは, 喘息診療において一部の表現型 (アトピー型) の喘息だけを対象とする新薬を受け入れる土壌をつくったことであろう. 一方, 約1年前に登場した抗IL-5抗体については, 好酸球性気道炎症を有する重症・難治性喘息に使用される. 本稿では, これらの生物学的製剤の現状と使用経験および今後への期待について内科医の立場から概説したい.