2018 年 32 巻 1 号 p. 88-95
食物アレルギーの臨床病型のうち, 成人でみられる代表的なものは即時型症状 (蕁麻疹, アナフィラキシーなど) であり, 特殊型として, 食物依存性運動誘発アナフィラキシー (FDEIA) と口腔アレルギー症候群 (OAS) がある. これらはいずれもIgE依存性の機序で発症し, アナフィラキシーとFDEIAは重症である. 成人の食物アレルギーには小児期発症の持続例と成人発症の両者が存在するが, 医療機関を受診する成人食物アレルギー患者の多くは後者である. それらの症例の多くは, 小児期発症のそれとは異なり自然寛解がなく, 加水分解小麦によるアナフィラキシーのような例外を除いて, 通常は過敏状態が生涯持続する. 成人食物アレルギーの原因アレルゲンは小麦, 甲殻類, 魚類, 果物などが多く, 鑑別すべき病態としてアニサキスアレルギー, 経口ダニアナフィラキシー (OMA) などがある. 一般に成人は小児に比べて重症化する場合が多く, 心血管疾患や気管支喘息などの慢性呼吸器疾患の合併, それらの治療薬としてのβアドレナリン遮断薬, ACE阻害薬などの使用歴に注意が必要である.