小児の一般臨床において, 長引く咳を訴えて受診する小児は少なくない. その原因は極めて多様であるが, 乳幼児では, 集団保育の初期などに感冒の連鎖的な反復によって軽度の鼻汁, 咳嗽が続いているだけのことも少なくない. その一方, 百日咳, 結核など周囲への感染拡大を抑えるため, 早急な対応が必要となる疾患もあり, その見極めは極めて重要である. 一般に, 病歴, 身体所見, 一般検査, 胸部単純エックス線, 肺機能検査 (6歳以上) で疾患特異性の高い所見から原因疾患の見当がつく 「特異的咳嗽」 と咳嗽以外の症状・所見が乏しく疾患が絞り込めない 「非特異的咳嗽」 に分けて鑑別診断を進めるアプローチが推奨されている. 非特異的咳嗽では, 1~2週間は経過観察し, 真に生活に支障をきたす咳が続く場合には, 順次診断的な治療を試みることが推奨されている. しかし, 診断と治療の妥当性とは無関係に自然経過で改善する場合が多いので, 効果判定期間が過ぎたら, 経過がよい場合も治療を中断して経過観察するなど, 治療の継続には慎重な判断が必要である.