2020 年 34 巻 3 号 p. 334-338
【背景】スギ花粉舌下免疫療法(SLIT)導入後にトマトの花粉―食物アレルギー症候群(PFAS)を発症した報告はこれまで認めない.
【症例】12歳男児.スギ花粉症と気管支喘息,リンゴ,キウイ,アボカドのPFASあり.トマトは無症状で摂取可能であった.スギ花粉症に対しSLIT開始1か月後,ミニトマトを2個摂取した直後に咽頭瘙痒感と呼吸苦を認めた.SLIT開始前と比べ5か月後のスギ,トマト特異的IgE抗体価は共に上昇を認め,トマトのprick-to-prick testは陰性から陽性に変化した.SLIT開始5か月後の食物経口負荷試験はミニトマト1個摂取直後に咽頭瘙痒感を認めた.なおトマトの加熱加工品は症状なく摂取可能であった.以上からトマトのPFASを発症したと考え,生のトマトは除去するよう指導した.
【結語】スギSLITによりトマトに対する感作が増強され,トマトのPFASを発症した可能性が考えられる.SLITを行う上で,対象となる花粉と交差反応性のある食物を摂取する際は注意が必要かもしれない.