日本小児アレルギー学会誌
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34 巻, 3 号
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原著
  • 鈴木 亮平, 相良 長俊, 青田 明子, 赤司 賢一, 勝沼 俊雄
    2020 年34 巻3 号 p. 319-324
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
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    【背景】Modified Pulmonary Index Score(MPIS)は客観性や再現性に優れた小児喘息急性増悪の評価方法である.MPISは入院を決定する上で有用なツールとなり得るが,評価項目に心拍数が含まれ,発熱の影響を受ける可能性が示唆される.

    【目的】入院予測のためのMPISカットオフ値が発熱の有無で変化するかを明らかにする.

    【方法】2013年11月から2018年10月に救急外来を受診した喘息急性増悪患児を対象とし,受診時のMPISと入院の有無との関係を後方視的に検討した.さらに,発熱患者のMPISを体温で補正し,入院との関係性を再度検討した.

    【結果】発熱患者における入院確率が80%となる受診時MPISのカットオフ値は,体温での補正前は9.7点(95%信頼区間=8.9-11.1),補正後で9.5点(95%信頼区間=8.6-10.9)であった.

    【結論】MPISは発熱を有する喘息急性増悪患者にも問題なく使用できる評価方法である.

  • 米野 翔太, 長尾 みづほ, 松浦 有里, 星 みゆき, 鈴木 尚史, 今給黎 亮, 小堀 大河, 藤澤 隆夫
    2020 年34 巻3 号 p. 325-333
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    【目的】重症喘息に投与されるオマリズマブが呼吸機能を改善させるか否かの評価は未だ確立していない.オマリズマブの投与を必要とした小児喘息で長期観察できた例で呼吸機能の推移を評価した.

    【方法】オマリズマブ投与後1年以上の小児気管支喘息患者を対象とし,診療録から後方視的に呼吸機能と臨床情報を収集した.%FEV1の変化量/年は投与前後の期間で,すべての測定データを線形回帰分析で算出した.

    【結果】対象は10例.オマリズマブ投与前の観察期間が1年以上の6例すべてで線形回帰から求めた%FEV1の変化量/年は負の値であった.1年未満の例は評価しなかった.オマリズマブの投与期間は1年9か月~7年6か月で,変化量が正の値となったのが5例,負の値が5例であった.負の例でも投与前観察期間が1年以上の3例では負の値が軽減していた.投与後に変化量が正に転ずる予測因子は同定できなかった.

    【結論】コントロール不良の喘息児においてオマリズマブ投与は呼吸機能を改善させるもしくは低下の程度を軽減する可能性がある.

  • 橋本 泰佑, 春日 彩季, 安藤 さくら, 山本 菜穂, 藤川 詩織, 藤谷 宏子, 近藤 康人, 濱崎 考史
    2020 年34 巻3 号 p. 334-338
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    【背景】スギ花粉舌下免疫療法(SLIT)導入後にトマトの花粉―食物アレルギー症候群(PFAS)を発症した報告はこれまで認めない.

    【症例】12歳男児.スギ花粉症と気管支喘息,リンゴ,キウイ,アボカドのPFASあり.トマトは無症状で摂取可能であった.スギ花粉症に対しSLIT開始1か月後,ミニトマトを2個摂取した直後に咽頭瘙痒感と呼吸苦を認めた.SLIT開始前と比べ5か月後のスギ,トマト特異的IgE抗体価は共に上昇を認め,トマトのprick-to-prick testは陰性から陽性に変化した.SLIT開始5か月後の食物経口負荷試験はミニトマト1個摂取直後に咽頭瘙痒感を認めた.なおトマトの加熱加工品は症状なく摂取可能であった.以上からトマトのPFASを発症したと考え,生のトマトは除去するよう指導した.

    【結語】スギSLITによりトマトに対する感作が増強され,トマトのPFASを発症した可能性が考えられる.SLITを行う上で,対象となる花粉と交差反応性のある食物を摂取する際は注意が必要かもしれない.

  • 中農 昌子, 橋本 直樹, 髙田 晃司, 飯田 陽子, 高川 健, 阪井 利幸, 虫明 聡太郎
    2020 年34 巻3 号 p. 339-345
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
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    顕微鏡的大腸炎は慢性下痢を主症状とし,大腸内視鏡所見がほぼ正常にも関わらず特徴的な病理学的炎症所見を呈する疾患と定義される.原因は薬剤や感染,遺伝素因,アレルギー,自己免疫などとされ,食物アレルギーが原因とする報告もある.

    症例は11歳男児.乳児期からの鶏卵と牛乳による誘発症状に関して,血中特異的IgE抗体は陰性であったものの皮膚試験から即時型アレルギーと考え,5歳時から鶏卵と牛乳の経口免疫療法(OIT:oral immunotherapy)を行い鶏卵は8歳時に部分解除となった.その後牛乳のOIT中に,鶏卵摂取とは無関係に牛乳摂取による消化器症状の頻度が著明に増加したため牛乳OITによる好酸球性腸炎合併を疑い11歳時内視鏡検査を施行したところ顕微鏡的大腸炎と診断した.好酸球性腸炎は否定的で,クローン病の可能性を指摘された.

    内視鏡検査は小児において施行できる施設は限られるが,直接病変を観察でき得られる情報は多く有用である.食物アレルギーの治療に難渋する症例に関しては,考慮に値する検査である.

  • 髙橋 浩樹, 五十里 裕美, 宮原 麻衣子, 髙橋 由希, 白川 清吾, 増田 敬
    2020 年34 巻3 号 p. 346-350
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    非IgE依存性食物蛋白誘発胃腸症で比較的急性の症状を呈する病型は食物蛋白誘発胃腸炎に分類され,人工乳による例がほとんどで固形食品が原因抗原となる例は少ない.なかでも魚類による報告は本邦ではまれである.症例1は7歳男児.2歳頃からカジキを摂取するたびに嘔吐した.各魚類の特異的IgE抗体陰性,カジキのリンパ球刺激試験陽性,7歳でのカジキの食物経口負荷試験陽性であった.症例2は2歳女児.離乳期にサケ,カレイ,サワラの摂取後に嘔吐を反復した.各魚類の特異的IgE抗体陰性,マグロ,カレイ,サワラ,サケのリンパ球刺激試験陽性であった.2症例とも症状に再現性があり,病歴から診断された.食物経口負荷試験やリンパ球刺激試験も診断の参考となった.固形食品,特に魚類による報告例はまれであり,症状も非特異的なため診断が遅れやすい.病型によっては慢性化することもあり早期診断が重要である.そのために魚類をはじめ固形食品も本疾患の原因抗原になることを認識し,反復する消化器症状の鑑別疾患の一つとして考慮すべきである.

  • 金城 優美, 崎原 徹裕, 川満 豊, 国島 知子
    2020 年34 巻3 号 p. 351-358
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    【背景】卵白感作陽性の乳児に対する鶏卵の早期導入法は定まっていない.導入前のスクリーニング経口負荷試験(OFC)や導入後の自宅摂取の安全性について前方視的に検討した.【方法】生後6か月で卵白感作陽性の鶏卵未摂取例に対し加熱全卵0.2g OFC(1st OFC)を行った.1st OFC陰性例に対し加熱全卵0.2gの摂取を開始,生後9~11か月に卵白1/4個OFC(2nd OFC)を行った.各OFC結果と自宅摂取の安全性を評価した.【結果】1st OFC陽性は15/63例(23.8%)で,陰性48例中42例が自宅摂取を開始し1例が中途脱落した.8/41例(19.5%)に自宅摂取で軽微な皮膚症状を認めた.2nd OFC陽性は4/41例(9.8%)であった.各OFC陽性例は陰性例と比較しオボムコイドsIgE値が高かった.【結論】卵白感作陽性の乳児への加熱全卵0.2g OFCは陽性割合が高く,陰性例でも一部に自宅摂取中に軽微な症状を認めた.感作陽性児ではより安全な導入法の検討が必要である.

  • 山崎 晃嗣, 竹村 豊, 有馬 智之, 益海 大樹, 長井 恵, 井上 徳浩, 杉本 圭相
    2020 年34 巻3 号 p. 359-365
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    【背景】食物経口負荷試験(OFC)の方法は各施設で総負荷量や摂取回数,摂取間隔を設定しており,この違いが結果に影響を与えることが考えられる.

    【対象・方法】卵白特異的IgE抗体価がクラス3,4の児に対し,20分加熱ゆで卵白8gを総負荷量として実施したOFCを対象とし,60分間隔2回漸増法と30分間隔3回漸増法を比較してOFCの陽性率,誘発症状時の陽性閾値量,誘発症状時の重症度等を検討した.

    【結果】2回法,3回法でOFCの陽性率はそれぞれ21例(30.4%),24例(38.6%)(P=0.72),誘発症状時の陽性閾値量は,8g,3gと統計学的有意差はなく(P=0.76),両法間とも認められた症状は全てmodified Sampson分類のGradeIII以下であった.統計学的な有意差は無かったが,2回法でのみ神経症状と循環器症状が出現した.

    【結論】卵白IgEクラス3,4の児に対する20分加熱卵白8gのOFCにおいて,2回法と3回法は安全性と有効性に有意差は認められない.

  • 五十嵐 瑞穂, 鈴木 大地, 秋山 聡香, 小花 奈都子, 川口 隆弘, 林 健太, 大場 邦弘
    2020 年34 巻3 号 p. 366-369
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
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    卵殻を含有するグラウンド用白線粉によるアナフィラキシーの小児例を経験した.卵アレルギー,アトピー性皮膚炎の既往がある6歳男児.運動会の練習中,白線がついた手で顔をこすった後,蕁麻疹,咳嗽が出現した.原因に卵殻を含有するグラウンド用白線粉を考え,母の判断で両上下肢,後頸部に白線を再度接触させた.接触5分以内に喘鳴と呼吸苦および接触させた部位と顔面に発赤,蕁麻疹を認めたため,抗ヒスタミン薬を内服させ,当院を受診した.受診時(内服後約1時間),皮膚症状と呼吸苦は消失していたが,聴診で呼気終末に喘鳴を聴取した.SpO2は100%であり,経過観察とした.当該製品の性状解析を行った結果,オボアルブミン濃度は20μg/g以上,粒子径は0.5~1000μmの範囲で分布,約10%は5μm以下であった.以上から,当該製品が接触抗原および吸入抗原となり,ほぼ同時に経皮および経気道的に吸収・吸入されたことで,即時型アレルギー反応を呈し,アナフィラキシーの定義を満たしたと考えられた.

  • 前田 晶子, 平田 量子, 橋本 総子, 松本 和徳
    2020 年34 巻3 号 p. 370-375
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    乳糖には微量の乳タンパクが含まれているが,牛乳アレルギー児において加工食品中の乳糖で即時反応を認めることは稀である.今回,中華スープの素に含まれる乳糖による即時反応を疑い,医薬品用乳糖の経口負荷試験で陽性となった牛乳アレルギー児の一例を経験したので報告する.症例は1歳女児.生後8か月時に微量のヨーグルトを摂取し,全身蕁麻疹を認めた.血液検査で牛乳特異的IgEが高値であり,牛乳アレルギーの診断で牛乳・乳製品は完全除去と指導していた.保育園で給食摂取後に蕁麻疹,嗄声を認めて救急受診された.給食で初めて摂取した中華スープの素に乳糖が含まれており,後日医薬品用乳糖を用いて経口負荷試験を行い陽性と判断した.乳糖で即時反応を経験することは稀であるため,牛乳アレルギー児全例に乳糖除去の指導する意義は低いと考えるが,乳糖に対する誘発症状を疑った場合は,経口負荷試験で確認することは重要である.また,陽性となった場合には,乳糖を含有する食品や医薬品について,患者家族や周囲に指導を行う必要がある.

  • 金城 優美, 新垣 洋平
    2020 年34 巻3 号 p. 376-383
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    囊胞性線維症(CF)は本邦では稀かつ予後不良な疾患であり,早期の診断,治療介入が必要とされている.症例は2歳男児.周産期歴に特記事項なし.生後11か月でインフルエンザに罹患後より,喘鳴と肺炎を反復するようになった.気管支喘息と診断し吸入ステロイド薬(ICS)を導入したが症状改善なく,線毛機能不全症,慢性気管支炎を疑い少量マクロライド療法を行うも治療反応に乏しかった.2歳2か月時にRSV肺炎に罹患後,陥没呼吸が持続した.2歳3か月時に喘鳴,低酸素血症のため入院し,胸部CT検査で肺野過膨張と末梢気管支壁肥厚を認め,喀痰培養より緑膿菌が検出された.また,肝腫大と体重増加不良を認めたためCFを疑いCFTR遺伝子検査を提出した.遺伝子解析で両アレルにc.2989-2A>G変異を認め,CFと確定診断した.現在はドルナーゼアルファとトブラマイシンの吸入療法を行い,再入院なく成長発達は良好である.本例のようにICSに反応しない乳幼児喘息では,CFなどの希少疾患も鑑別に挙げる必要がある.

総説
  • ―診断,治療,病態について―
    松原 知代
    2020 年34 巻3 号 p. 384-390
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    川崎病は1967年に川崎富作先生によって報告された疾患で,様々な病因が提唱されたが未だ原因不明のために臨床症状を用いた「川崎病診断の手引き」によって診断を行う.「川崎病診断の手引き」は2019年に第6版として17年ぶりに改訂された.今回の改訂は,正しく診断して治療が遅れないこと,不全型の定義を明確にすること,川崎病でない症例を可能な限り鑑別することを目的としている.治療は川崎病急性期治療ガイドラインによって行われるが,免疫グロブリン不応例の2ndライン,3rdラインの治療選択が問題となる.川崎病発症の素因がある小児に,病原体の感染などが契機となって,過剰な免疫反応により炎症性サイトカイン産生が亢進し,全身の中小動脈の血管炎がおこることが病態と考えられている.

    2019年12月から発生し世界的に流行した新型コロナウイルス感染症により,川崎病様症状を呈する重症小児例が欧米で報告されている.川崎病の病態とどのような関連があるのか今後の解明が期待される.

  • ~離乳食早期摂取による経口免疫寛容~
    成田 雅美
    2020 年34 巻3 号 p. 391-399
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    即時型食物アレルギーの発症予防には,食物抗原への感作予防と経口免疫寛容の誘導という2つの戦略がある.乳児アトピー性皮膚炎患者では皮膚バリア機能が低下した湿疹部位からの経皮感作がおこることが明らかになったが,食物感作の予防に有効な方法は報告されていない.しかし感作が成立後でも経口免疫寛容が誘導されれば食物アレルギーの発症を予防できる.最近のランダム化比較試験のメタ解析の結果,ピーナッツや鶏卵については生後4か月~6か月の早期摂取開始による食物アレルギー発症予防効果が認められている.わが国では数十年の間に鶏卵摂取開始が遅くなり平成19年には鶏卵摂取開始の目安が実情に合わせて7,8か月とされた.その後の知見をふまえ「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」では鶏卵摂取開始が離乳食開始時期の生後5,6か月に変更された.食物抗原の離乳食早期摂取開始は,すでに食物アレルギーを発症した患者での症状誘発などに注意する必要はあるが,経口免疫寛容の誘導による食物アレルギー発症予防が期待される.

解説:アレルゲン
  • 中島 陽一
    2020 年34 巻3 号 p. 400-407
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    魚類の主要アレルゲンは筋形質タンパク質であるパルブアルブミンである.熱に安定で,水に溶けやすいという性質を持つ.魚種間で交差抗原性をもつため,魚アレルギー患者は複数の魚種に症状を示す場合がある.第2のアレルゲンとしてのコラーゲンも魚種間で交差抗原性を有する.ほかマイナーなアレルゲンとしてアルドラーゼやエノラーゼなど複数のアレルゲンの報告がある.魚卵のアレルゲンとしてはイクラ,タラコ,キャビアで解析がされており,イクラでは卵黄タンパク質のうちβ'-コンポーネントが主要アレルゲンとされている.β'-コンポーネントの詳細な解析はまだされていない.

  • 松井 照明
    2020 年34 巻3 号 p. 408-418
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    甲殻亜門アレルギーは比較的頻度が高く,本邦を含め世界中で確認されているが,その有病率には地域差があり,消費量の多い国で多い.甲殻亜門の中では,エビのアレルギーの頻度が最も高いため,アレルゲンとしての解析が最も行われている.トロポミオシン(TM)はエビの主要なアレルゲンであるが,アレルギー患者における特異的IgE抗体陽性率には地域差が存在し,本邦での陽性率は高くない.TMは,エビ,カニが含まれる十脚目の間のみでなく,オキアミやシャコ等も含めて甲殻亜門間でのアミノ酸配列の相同性が高く,交差抗原性を示すが,軟体動物門やダニ等との交差抗原性も確認されている.甲殻亜門と交差抗原性を示すダニ及びダニのTMに対するIgE抗体陽性率の地域差は,TMの検査精度の地域差を生じる一因と推定される.TM以外にもアルギニンキナーゼ,ミオシン軽鎖,筋形質カルシウム結合タンパク,トリオースリン酸異性化酵素,ヘモシアニン,トロポニン等のアレルゲンが次々と報告されており解説する.

喘息治療・管理ガイドライン委員会報告
  • 真部 哲治, 高岡 有理, 桑原 優, 足立 雄一
    2020 年34 巻3 号 p. 419-427
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    小児喘息患者における,呼気一酸化窒素(NO)値に基づく長期管理薬調節の有用性をシステマティックレビューにより検討した.18歳以下の喘息児に対して,長期管理薬の調節を,臨床症状に呼気NO値を合わせた(あるいは呼気NO値のみ)評価により行った群と臨床症状のみの評価により行った群で無作為比較対象を行っている文献を抽出し,急性増悪(発作)を起こした人数を主要評価項目とした.9編(N=1279)が採用され,大部分がアトピー型喘息児で,呼気NOの基準値には幅があった.呼気NO値を合わせた長期管理薬の調節により,急性増悪を有意に抑制した(OR 0.63,95% CI 0.49 to 0.81,P=0.0003).小児喘息児において,臨床症状と呼気NO値を合わせてコントロール状態を評価して長期管理薬を調節することは有用な可能性がある.しかし,呼気NO値の具体的な基準値が明確でなく,合併するアレルギー疾患の影響を受けうるため,一般診療として,推奨はせず,提案するにとどめた.

  • 田中 裕也, 佐藤 幸一郎, 鈴木 修一, 中島 陽一, 錦戸 知喜, 平口 雪子, 三浦 太郎, 村井 宏生, 足立 雄一
    2020 年34 巻3 号 p. 428-433
    発行日: 2020/08/05
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル 認証あり

    小児気管支喘息患者に対してダニアレルゲン特異的免疫療法(皮下免疫療法,舌下免疫療法)とプラセボを比較した試験は16編あり,その中で皮下免疫療法では喘息症状,頓用薬の使用,全身性ステロイド投与,長期管理薬の使用量,呼吸機能において,舌下免疫療法では喘息症状,呼吸機能においてダニアレルゲン特異的免疫療法が効果的であることが示された.しかしエビデンスレベルが総じて低く,日本人小児を対象とした試験がなかった.また本邦では皮下免疫療法は喘息への保険適応があるものの,舌下免疫療法は現時点でアレルギー性鼻炎のみが適応となっており,その実施には喘息が十分にコントロールされていることが注意点として挙げられている.アレルゲン特異的免疫療法には副反応も少なからず報告されており,治療効果と副反応のバランスを考慮していく必要がある.

    ダニアレルゲン特異的免疫療法には小児喘息に対する治療効果が期待でき,十分な注意を払ったうえでダニに感作された小児喘息に対する長期管理における標準治療の一つとすることを提案する.

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