日本小児アレルギー学会誌
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シンポジウム6:食物アレルギー・免疫療法の新展開
食物アレルギー治療のこれから
小林 茂俊
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2021 年 35 巻 1 号 p. 77-84

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抄録

食物アレルギーの治療においては,原因食物除去から食べる治療への方向転換が起こっている一方で,治療の安全性という課題が浮上してきている.経口免疫療法に一定の効果があることは間違いないが,症状誘発のリスクがある,長期予後が不明であるなど解決すべき課題は多く,現時点では一般診療としては推奨されない.

食物アレルギーの治療を安全に行うためには,正しい診断と重症度評価,適切な食物経口負荷試験の施行と治療適応の判断,食物アレルギーに関する正しい知識の習得が欠かせない.その上で,さらに経口免疫療法の安全性を高める方法として,患者の状況に応じて目標量や増量・維持方法を最適化すること,投与経路の工夫(舌下免疫療法,経皮免疫療法),抗原の標準化,低アレルゲン化食品の使用,抗ヒトIgE抗体併用療法などが検討されている.安全に経口免疫療法を行うためには救急体制整備,地域連携システム構築も必要である.今後は「地域で治す食物アレルギー」という考えのもと,食物アレルギー診療の均てん化を目指すべきであろうと考える.

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© 2021 日本小児アレルギー学会
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