2021 年 35 巻 1 号 p. 85-87
本シンポジウムでは,アレルゲン免疫療法(AIT)のメカニズムについて,経時的な変化を中心に講演した.AITの開始早期においては,脱感作(マスト細胞や好塩基球の活性化と脱顆粒の抑制)が,アレルゲン特異的および非特異的に誘導される.長期的な脱感作の誘導には,IgG4の誘導およびマスト細胞・好塩基球の活性化閾値の低下が重要であると考えられている.また,AITの継続によりアレルゲン特異的制御性T細胞(Treg)などが誘導され,アレルゲン特異的免疫応答を抑制する.しかし,長期間のAITにおける末梢血アレルゲン特異的T細胞サブセットの解析では,Treg比率の変化は明らかではない一方で,Anergic memory細胞比率の増加が示されている.AITの効果予測には,Anergic memory細胞の観察が有用である可能性がある.今後は,AITのメカニズムの解析をもとにした分子標的薬などによる介入により,より有効かつ安全なAITが開発されることが望まれる.