2022 年 36 巻 1 号 p. 1-6
小児喘息の正しい診断・評価のためには,喘息症状の程度や頻度を正確に把握することが重要である.しかしながら,医師と保護者の間の「喘鳴」の認識の乖離や,喘鳴エピソードの記憶の不確かさから,過剰診断や過少診断がおこる可能性がある.適切な診断のためには,喘息症状を保護者に分かりやすく伝え,丁寧に病歴の聴取を行うことが肝要である.また,「喘息を疑う」症状があるかだけでなく,「喘息以外を疑う」症状がないかを,慎重に確認する必要がある.また,気道炎症を評価する呼気NO検査は,外来で簡便に施行できるため,正しい診断・評価のために,是非活用したい.
小児喘息において,未だ不十分と考えられる評価として,成人移行に関連する評価が挙げられる.小児喘息は,「小児期発症慢性疾患」の一つであるが,思春期に急性増悪の回数が減少することが多く,継続的な受療がなされない場合があり,小児期の医療と成人期の医療の間に分断が存在している.成人期の予後を見据え,喘息の評価のみならず,移行準備の評価や心理的な評価も重要である.