日本小児アレルギー学会誌
Online ISSN : 1882-2738
Print ISSN : 0914-2649
ISSN-L : 0914-2649
36 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
シンポジウム1:小児アレルギー 正しい診断・評価~ご法度から学ぶ~
  • ~ご法度から学ぶ~
    井上 祐三朗
    2022 年 36 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    小児喘息の正しい診断・評価のためには,喘息症状の程度や頻度を正確に把握することが重要である.しかしながら,医師と保護者の間の「喘鳴」の認識の乖離や,喘鳴エピソードの記憶の不確かさから,過剰診断や過少診断がおこる可能性がある.適切な診断のためには,喘息症状を保護者に分かりやすく伝え,丁寧に病歴の聴取を行うことが肝要である.また,「喘息を疑う」症状があるかだけでなく,「喘息以外を疑う」症状がないかを,慎重に確認する必要がある.また,気道炎症を評価する呼気NO検査は,外来で簡便に施行できるため,正しい診断・評価のために,是非活用したい.

    小児喘息において,未だ不十分と考えられる評価として,成人移行に関連する評価が挙げられる.小児喘息は,「小児期発症慢性疾患」の一つであるが,思春期に急性増悪の回数が減少することが多く,継続的な受療がなされない場合があり,小児期の医療と成人期の医療の間に分断が存在している.成人期の予後を見据え,喘息の評価のみならず,移行準備の評価や心理的な評価も重要である.

  • 二村 昌樹
    2022 年 36 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    アトピー性皮膚炎の診断基準には,Hanifin&Rajka基準,UK Working Party基準,そして日本皮膚科学会の基準がある.日本皮膚科学会基準には複数の除外すべき診断が記載されているが,小児科医にはそのすべてを鑑別することは困難である.そこでアトピー性皮膚炎の治療によって増悪してしまう疾患のみを鑑別し,診断後も頻繁に診察して病勢を観察する.乳児湿疹とアトピー性皮膚炎は治療方法がほぼ同一であるため必ずしも鑑別する必要はない.診断後に行う湿疹重症度の評価には,医療者によるものと患者が行うものがある.医療者による主な評価指標には,重症度の目安,IGA,EASI,SCORADがあり,EASIやSCORADは評価に時間を要するため日常診療に導入することは容易ではない.しかし生物学的製剤の処方時にはEASIによる評価が必須となるため,今後は小児科医であってもEASIに慣れておく必要がある.一方,患者による主な評価指標には,POEMやPO-SCORADがあり,診療日以外の皮膚状態を把握するためのツールとしても活用できる.

  • 佐藤 さくら, 海老澤 元宏
    2022 年 36 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    IgE依存性食物アレルギーは「特定の食物により症状が誘発されること」と「特異的IgE抗体の証明」により診断され,原因食物が特定できない場合には食物経口負荷試験(oral food challenge;OFC)にて確定診断する.安全にOFCを実施するために,実施医療機関やOFC方法をリスクに応じて選択する必要があり,自施設でのOFC実施が困難な場合には,早期にOFC実施可能な医療機関へ紹介する.

    しかし,実際には正しい診断や評価が行われずに,安易に食物除去を指示されているケースがいまだに存在する.湿疹の治療をせずに特異的IgE抗体検査陽性のみを理由に多抗原の食物除去を指示された乳児アトピー性皮膚炎の症例や,乳児期に食物除去を指示され,その後一度もOFCを実施されず学童期まで除去を継続している症例もいる.ピーナッツ・木の実類や甲殻類など交差抗原性の誤った知識により摂取可能な食物の除去を指示されている症例も経験する.本稿では小児期の食物アレルギーの正しい診断・評価におけるご法度について紹介し,食物アレルギーの診療の質の向上に寄与したい.

シンポジウム4:アレルギー疾患とQOL~子どもと家族を温かく支えるために~
  • ~現在と未来の喘息児のQOLを守るために~
    平井 康太
    2022 年 36 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    喘息の患児や家族にとって呼吸苦,咳嗽による睡眠障害,生活・運動の制限,通院,環境整備,急性増悪に対する不安などが生活の質(quality of life,QOL)に大きく関係している.特に夜間の咳嗽は睡眠を妨げるだけでなく,体力も消耗し著しくQOLを悪化させている.また,極長期ではアウトグロー,将来の呼吸機能・慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease,COPD)と小児期の喘息が深く関わっていることが示唆されている.そこで,急性期・長期管理では咳嗽による睡眠障害を,極長期管理ではCOPDに注目して最新の情報や自験例をもとに概説する.

  • 高増 哲也
    2022 年 36 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    アレルギー疾患への対応法は,これまでは医学的に病態を把握して治療を行うという視点で論じられてきた.生活者の視点で見る時に,アレルギー診療をスキルミクスで取り組むことや,Quality of Life(QOL)をものさしにするという発想がある.アトピー性皮膚炎でQOLに影響を及ぼす因子は,かゆみ,見た目,治療の負担,不安がある.アトピー性皮膚炎のQOL調査票は,成人ではSkindex-16,Dermatology Life Quality Indexがあり,日本語版がある.小児ではThe Children's Dermatology Life Quality Indexがあり,これにも日本語版がある.低年齢児では,養育者が主に治療を担うため,養育者の負担を評価するものが必要である.Quality of life in Primary Care givers of children with Atopic Dermatitisとその短縮版QP-CAD shortened to 9 questionsがある.患児と養育者双方のQOLを養育者が回答するthe Childhood Atopic Dermatitis Impact Scaleを日本の患者に合わせて修正したJapanese Culturally Modified Version of the Childhood Atopic Dermatitis Impact Scaleが利用できる.生活者の視点で医療を進めていく上で,オープンダイアローグという手法がありえる.

  • 本村 知華子
    2022 年 36 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    食物アレルギー患者には現在安全性が保障されている有効な治療法がない.アナフィラキシー既往がある例では症状が出現する不安があり,摂取が進まずに社会生活の制限がなされている.このような重症食物アレルギー児,養育者には,QOLの保持を目的としたプログラム(アレルギー教室,サマーキャンプ)を行うことが有効であるが,本邦ではQOLを測定する質問紙が開発されていない.そこで,食物アレルギー児の評価と病状の変化時に使用でき,治療群間の比較,またQOLの保持を目的としたプログラムの評価に使用できる食物アレルギー児自身が回答する自身の疾患特異的QOL尺度,養育者が回答する児の尺度,養育者自身の尺度開発を開始した.

    小児アレルギー領域では治療有効性判定に使用できる本邦で開発されたQOL質問紙が少ないため,患者視点からの治療効果判定が脆弱な状況がある.日頃診療を行っている医療者が患者のQOLを判定する尺度を開発することが,患者が選択するテーラーメードな食物アレルギー診療につながるであろう.

シンポジウム5:大規模災害時におけるアレルギー疾患患者の問題とその対
  • 平瀬 敏志, 三浦 克志, 小林 茂俊
    2022 年 36 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    アレルギー疾患患者には,災害時に環境対策や食品の配慮などが必要であり『要配慮者』とされている.災害対応における行政の役割は大きいが,これまでに自治体の災害時のアレルギー疾患対策について調べた研究はほとんどない.

    本研究では,アレルギー患者のための災害の備えの実態を把握し行政からのアンメットニーズを抽出する目的で,全国市町村に対してアレルギー疾患への備えのアンケート調査を行った.その結果,アレルギー用食品やミルク備蓄の不足・都市規模による備蓄の偏り・備蓄情報の公開不足・災害が長期化した際の対策不足・災害情報の共有不足などが問題点として挙げられた.その理由としては,アレルギー疾患に対する基本的な知識が不足していること,自治体が災害時のアレルギー患者の現況を把握できていないことなどがあると考えられた.一方で行政が学会に望む取り組みとして「医師から患者への自助の啓発」が挙げられた.

  • 堀野 智史, 三浦 克志, 小林 茂俊
    2022 年 36 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    【背景】アレルギー患者は災害時には「要配慮者」であり,環境,食品などに対して配慮が必要である.既存の災害時のアレルギー疾患対応に関する資料では,避難所を運営する自治体を対象とするものはほとんどない.過去の災害で,行政がアレルギー疾患対応を行った際に直面した課題を明らかにすることは,今後の災害に備える上で役立つと考える.本研究では過去に被災した自治体に対して災害時のアレルギー疾患対応の経験を調査した.【方法】2015年~2020年に災害救助法が適用された市町村に書面のアンケートを送付した.【結果】323市町村について解析した.災害は水害が77%,地震が21%であり,全体の88%が避難所を設置した.避難所で食料や食事を提供する際に,食物アレルギー患者への対策を講じた自治体は38%であった.アレルギー疾患の対応で困ったと回答した自治体は1~3%であったが,自由記載により具体的な要望や問題点を知ることができた.【結語】本結果から大規模災害に備えるための自治体への情報提供などサポート体制の構築が課題と思われた.

  • 杉浦 至郎, 伊藤 浩明, 小林 茂俊
    2022 年 36 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    背景

    アレルギー疾患患者の災害時対応に関する情報は十分とは言えない.

    目的

    大規模災害に対する患者・家族の意識や準備状況,必要とする情報や対策に関するアンメットニーズを把握する.

    方法

    2021年1月~2月に全国の成人を含むアレルギー疾患患者もしくはその養育者に,Googleフォームを用いたアンケート調査を行い,20歳未満患者の養育者の回答を解析した.

    結果

    解析対象は合計1,221件(女性92%)であった.「学会や自治体の相談窓口やパンフレット」「アレルギーポータル」「公的避難所のアレルギー対応食備蓄有無」に関してはそれぞれ83%,58%,83%が知らないと回答し,家庭における食糧備蓄量は3日分以上が72%,7日分以上が15%であった.災害時に欲しい情報は「薬がない時の対処」が最多で,電源を考慮し紙媒体での提供希望が多かった.被災経験者が困ったことは「皮膚症状の悪化」が最多であり,「アレルギー疾患に関して相談したかったが,相談先がわからなかった」の回答が24%存在した.

    考察

    自助の啓発に加え,公助の充実と周囲の理解が必要であることが明らかになった.

  • 宮本 学, 岡部 公樹, 吉川 知伸, 本村 知華子, 小林 茂俊
    2022 年 36 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    アレルギー疾患患者は,災害時において「要配慮者」とされ,避難所における対応が求められる.我々は,災害医療従事者を対象に,災害時のアレルギー患者対応に関するパンフレット,相談窓口など既存のツールの評価,災害医療者のアンメットニーズを調査するためアンケート調査を行い,1,015名から回答を得た.アレルギーに関する情報を得る手段は,平時では電子媒体や講演会が,災害時にはスマートフォンアプリや紙媒体の要望が多かった.アレルギーポータルをはじめとした既存ツールの認知度は約10~30%と高くなかった.COVID-19が災害時のアレルギー疾患対応に悪影響があると回答したのは66%であった.73%の災害医療従事者が,災害時アレルギー対応窓口の一本化を望んでいた.また,自助の啓発,患者情報を把握するためのツールを要望する意見も多数みられた.これらの結果から,アレルギー疾患マニュアルの拡充と更なる普及,アレルギー診療に関する問い合わせを一括する仕組み作り,アレルギー疾患患者自助に関する情報提供などを積極的に行う必要があると考えられた.

  • 小林 茂俊, 足立 雄一
    2022 年 36 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    【背景】アレルギー疾患は多岐にわたり,対応する診療科が各々異なる.災害時のアレルギー患者対応には,各診療科医師の協同が望まれる.また,アレルギー対応食や薬剤確保などの対策には行政,薬剤師,看護師,栄養士,患者会,企業等との連携も必要となる.本研究では現状の問題点を抽出し,それに基づいて連携構築の提案を行う.

    【方法】関連学会等の聞き取り調査,行政,患者・養育者,災害医療従事者へのアンケートを分析し,連携に対する提案を考案する.

    【結果】各団体の活動は個別には行われているがまとまりのある活動はされてこなかったこと,各学会で温度差があることが判明した.活動の認知度は低く,統一された相談窓口に対する需要があることもわかった.

    【結語】解決策の一つとして「アレルギー関連災害対応窓口」の構築を提案する.対象者がメールフォームに入力,内容に応じて専門医,関連団体等が対応する.対象は患者だが,行政,災害医療従事者と拡大していくことが望ましい.今後,運用方法,設置場所については慎重に検討する必要がある.

  • 吉田 幸一, 二村 昌樹, 小林 茂俊
    2022 年 36 巻 1 号 p. 70-73
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    行政・医療系学会から災害に備えた情報・マニュアルが提供され,ウエブサイトからアレルギーに関連する多くの防災情報が入手できる.しかし我々のアンケート調査では,自助・共助・公助すべてにおいてその情報を十分に活用し備蓄を行い,発災時に対応できているという状況ではなかった.また,アレルギー関連学会が作成した災害関連資料は,少数の災害医療従事者しか利用しておらず,メッセージを届けたい相手に「アクセスしやすい」「利用したい」情報ではなく,ツール・情報発信には課題が多いようであった.

    現在我々はアンケート結果を参考に既存ツールの改変や新たなツール作成を行っている.さらに,防災特に発災時に使用するツールは必要な情報が簡便に入手できる必要がある.そのため,一つのサイトに情報を集約し,サイト内にいつ(平時の準備期・発災時),だれ(一般の方・行政の方・医療従事者)が使うツールなのかを明確に表示することによって,多くの方々に広く利用いただけるようにすることを目指して活動している.

シンポジウム9:検査でどこまで子どものアレルギーを診断できるか ~アレルギー検査の進歩を知る~【Advance】
  • 永倉 顕一, 海老澤 元宏
    2022 年 36 巻 1 号 p. 74-80
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    即時型食物アレルギーの診断のGold standardは食物経口負荷試験(OFC)であるが,他の検査によりOFCのリスクを軽減できる.

    特異的IgE抗体価から症状誘発の確率を予測したプロバビリティカーブが報告されているが,対象集団の年齢,OFCの方法などの影響を受ける.近年,アレルゲンコンポーネント特異的IgE抗体検査が日常臨床で利用可能となり,鶏卵のオボムコイド,小麦のω-5グリアジン,種実類では2SアルブミンであるピーナッツのAra h 2,クルミのJug r 1,カシューナッツのAna o 3のカットオフ値が報告されている.

    乳児では特異的IgE抗体陰性でも皮膚プリックテスト(SPT)陽性で診断に至る場合もある.ソバのSPTは特異的IgE抗体検査より診断に有用である.

    免疫学的検査の進歩により即時型食物アレルギーの診断精度は向上しているが,現状では確定診断にはなり得ない.一方でOFC前のリスク評価としての重要性は高まっており,今後は層別化診療を容易にするアプリケーションの開発が望まれる.

  • 近藤 康人
    2022 年 36 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    花粉に感作された患者が花粉抗原と交差反応性を有する果物や野菜を摂取して即時型アレルギー症状をきたす病態を花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)という.臨床症状はほとんどの場合,口腔粘膜に限局することから口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれる.しかし,少数の患者で,口腔症状から全身症状に波及しアナフィラキシーに至る場合もあると報告されている.

    診断では病歴がもっとも大切である.花粉症の病歴に加え,加工品は食べられるが,新鮮な果物や生野菜を食べた時にのみアレルギーを発症する特徴がある.PFASに係るアレルゲンの代表はBet v 1ホモログであるが,最近Profilinや新規アレルゲンGRPの関与を示唆する報告があり注目されている.しかし利用可能な組み換えアレルゲン数が少なく,補助試験としては食品そのものを利用したprick-to-prick試験が主要となっている.果物アレルゲンは品種や部位,成熟度で存在量に差があることから,PFAS診断の向上のためには,標準化された検査試薬のさらなる開発が必須である.

  • 加藤 政彦
    2022 年 36 巻 1 号 p. 86-92
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    気管支喘息は,多様性を持つ慢性の炎症性疾患であり,最近のクラスター解析によれば,以下の4つのフェノタイプに分類される.1)early-onset allergic asthma,2)early-onset allergic moderate-to-severe remodeled asthma,3)late-onset nonallergic eosinophilic asthma,4)late-onset nonallergic noneosinophilic asthma.さらに,免疫反応から,Type 2(high)とnon-Type 2(or Type 2 low)のエンドタイプに分類できる.Type 2喘息のバイオマーカーとしては,血液中好酸球数,血清中特異的IgE抗体,FeNO,ペリオスチン,Type 2サイトカインなどが挙げられる.さらに,発症年齢,増悪因子,合併症に加えて,生理学的な肺機能検査を参考に治療を選択する.今後,遺伝子や蛋白解析などのオミクス研究により信頼できるバイオマーカーの確立と治療戦略が可能となる.

原著
  • 池田 聡子, 川口 千晴, 清益 功浩, 河原 信吾, 中農 昌子, 大塚 敬太, 田尻 雄二朗, 大仲 雅之, 南部 光彦
    2022 年 36 巻 1 号 p. 93-100
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    【目的】食物アレルギー児が安全に生活するための患者教育・環境整備に役立てるため,奈良県内における食物アレルギー児の誤食状況の実態を把握する.

    【方法】2019年11月から2020年10月までの1年間に奈良県内8施設に通院中の食物アレルギー児のうち誤食があった児の保護者にアンケート調査を行った.

    【結果】年間80件の誤食があり,発生場所は自宅が51件と最も多く,次いで外食,給食であった.発生原因として自宅では原材料の確認不足や目を離したことによるものが多く,外食では原材料の確認不足,給食では誤配膳が原因の大半を占めた.

    【考察】家庭での原材料の確認不足を原因とする誤食が多く,最も重要な対応策は丁寧な患者教育であると考えられた.特に外見から判断するのではなく,自分で調理していないものや初めて食べるものは毎回丁寧に原因抗原の含有の有無を確認することの重要性を伝えていくことが必要と考える.食物アレルギー児が安全に生活するためには,患児をとりまく周囲の関係者も危機意識の共有が必要である.

  • 中里 友美, 杉浦 至郎, 楳村 春江, 佐々木 渓円, 古田 朋子, 伊藤 浩明
    2022 年 36 巻 1 号 p. 101-113
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    【背景】食物アレルギーに対する経口免疫療法が,患児及び保護者の食生活にもたらす不安・負担の軽減,及び治療自体の負担を評価した報告は乏しい.

    【方法】あいち小児保健医療総合センターアレルギー科で急速経口免疫療法を受けた45名(鶏卵21名,牛乳10名,小麦14名)の患児及び保護者に対し,治療開始時,1年後,2年後,3年後に質問紙調査を行った.

    【結果】治療開始時,9割の保護者は外食制限の負担やアナフィラキシーによる命の不安を感じ,9割の患児は食べたいものを我慢することへの負担を感じていた.これらの不安・負担は治療開始後徐々に改善した.しかし,アレルゲン摂取後の運動制限や他の食物アレルギーの存在は不安・負担が改善し難いことと一部関連していた.保護者の治療負担感は開始時に大きく,治療開始後徐々に改善したが,患児では明らかな変化を認めなかった.

    【結語】経口免疫療法導入時には,その効果と同時に長く続く負担についても十分説明し,保護者の決意に加え患児本人の自発的な意志決定が重要である.

  • 安藤 枝里子, 磯崎 淳, 柏崎 佑輔, 田中 晶
    2022 年 36 巻 1 号 p. 114-118
    発行日: 2022/03/20
    公開日: 2022/03/18
    ジャーナル 認証あり

    百日咳は吸気性笛声,発作性遷延性の咳嗽,咳込み嘔吐,無呼吸発作などの症状を認めるが,年長児では特徴的な症状が明らかでないことも少なくない.気管支喘息の長期管理中に,咳嗽を主訴に百日咳と診断した3例を経験した.症例は14歳の女児,11歳の女児,11歳の男児であり,気管支喘息急性増悪に対する治療の反応に乏しく,百日咳を疑う咳嗽の性状から関与を疑い診断した.百日咳,気管支喘息の急性増悪ともに,夜間に増強する咳嗽を認める.気管支喘息の患児では,咳嗽に対し急性増悪として急性期治療が行われることが多い.しかし,急性期の治療に反応が乏しい場合には百日咳をはじめとする他の検索を行い,適切な診断にもとづく治療を行うべきである.

疫学委員会報告
feedback
Top