日本小児アレルギー学会誌
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総説
食物アレルギーの定量的リスク評価と海外におけるアレルギー表示の課題
福家 辰樹
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2022 年 36 巻 3 号 p. 241-247

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抄録

現在,アレルゲン性の原材料の表示を義務づける法制度は多くの国に導入されている.一方,食品製造時のクロスコンタクトにより意図せず混入する可能性のあるアレルゲンに対して「入っているかもしれない」可能性表示(PAL:precautionary allergen labelling)の形式で提供する方法に関しては,本来のアレルギー患者を保護する観点を超えて,かえってその記述のために消費者の行動を制限することが知られている.日本は特定原材料等に関する検査法を確立し,タンパク含有量に明確な基準を設けることでPALを法律で禁止している数少ない国の1つであるが,多くの国ではアレルゲン曝露量と食物アレルギー患者の症状誘発に関する世界的なコンセンサスがないこと等を理由にPALを規制出来ていない.意図しないアレルゲンの混入はどこまで許容出来るのか.消費者及び企業関係者の誰もが受け入れられる答えを見つけるため,諸外国ではリスク評価ベースのアプローチを模索する動きが現在も続いている.

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© 2022 日本小児アレルギー学会
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