2023 年 37 巻 1 号 p. 1-6
第二次世界大戦以降,Asthma Epidemicと表現されるように喘息の罹患率が急増してきた理由として,遺伝要因よりも環境の変化が大きな影響を与えていると考えられる.アレルギーと環境との関係については,1989年のStrachanの報告以来数多く示されているが,そのメカニズムは未だ「仮説」の域を出ていない.また,今までの多くの研究はある特定の曝露因子と喘息の発症や増悪との関連を調べたものであり,これらの結果だけではエビデンスに基づいた適切な患者指導を行うことは難しい.そこで,最近様々な環境曝露因子を総体(エクスポソーム)として捉えてその影響を解析するエクスポソミックスによって,胎内から生涯に及ぶ様々な環境要因への曝露と喘息との関係が少しずつ明らかになりつつあり,今後この分野での研究が発展することが期待される.