日本小児アレルギー学会誌
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小児期における Respiratory syncytial virus 感染症
永山 洋子
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1999 年 13 巻 4 号 p. 8-21

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抄録
Respiratory syncytial virus (以下RSV) 感染症は乳幼児期に多くみられる疾患であるが, しばしば初回喘鳴のエピソードを伴い, 細気管支炎と診断される. しかしその後一部の症例に喘鳴をくりかえしRSV感染後に喘息と診断される症例があることが指摘されている. 動物モデルにおいてRSVの抗原別に免疫反応を検討した成績ではCD4+あるいはCD8+T細胞のどちらか, 又はTh細胞の産生するサイトカインがTh1かTh2へ傾くかはRSVの表面蛋白の差による. 私たちは344名の小児のRSV感染症の病態を検討した. このうちすでに喘息と診断されている者は35.5%であった. これらの患児では臨床的に, いくつかの特徴を有していた. すなわち喘息児は比較的年長になるまでRSV感染症に罹患すること, 特に3歳時では肺炎発症率も高く, 有熱率も高かった. RSVは炎症惹起性のサイトカインや好酸球遊走因子の産生を促進させることが培養細胞上ですでに明らかになっているが, 最近これらの物質が乳児のRSV細気管支炎患児の下気道で増加しているという報告がでてきた. これらの最近の知見は小児期の喘息発症の機序と考える上で, 示唆に富むものである.
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