日本小児アレルギー学会誌
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二人の主治医を重複受診して重症度を過小評価されていた喘息死の一例
伊藤 浩明松下 ゆかり吉田 潤小崎 武坂 英雄坂本 龍雄鳥居 新平
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2001 年 15 巻 3 号 p. 311-316

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抄録

思春期における喘息死の予防は, 小児アレルギー学の直面した課題の一つである. 我々は, 軽症持続型と思われていた中学3年生の喘息死を経験した. 心肺停止で入院し, 脳死状態で11日間治療した後に腎不全で死亡した. 病理所見では, 気道内腔の粘液塞栓, 杯細胞の増殖, 基底膜や気管支平滑筋の肥厚など気道のリモデリング像が明らかで, 慢性気道炎症の存在が示唆された. 本例は, 二人の主治医に重複受診しており, 両主治医とも自分の処方のみで発作がコントロールされていると判断していた. 実際には定量噴霧式β2刺激薬 (MDI) を1ヶ月に2本以上使用し, 運動誘発発作のために, マラソンなどは自粛していた. 本症例のようにMDIの過量使用によって重症度がマスクされている場合でも, 運動誘発発作の存在は重症度を見直して十分な抗炎症療法を開始するポイントとなるべきであると考えられた.

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