日本小児アレルギー学会誌
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ゲノム情報に基づくアレルギー疾患のオーダー・メイド医療
斎藤 博久
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2001 年 15 巻 5 号 p. 507-512

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抄録
20世紀の終わりの2000年6月にヒト・ゲノム配列解析プロジェクトがほぼ完了したことが宣言され, 21世紀のはじまりである2001年2月に, その成果が Science 誌と Nature 誌にほぼ同時に発表された. このことにより今までの約10万と推定されていたヒトの遺伝子数が3-4万であることが判明した. 2001年とは, 宇宙船「Discovery」が木星に出発しているはずの年であった. その「2001年宇宙の旅」の映画が公開された1960年代後半の巨大プロジェクトであったアポロ計画後の宇宙開発が遅々としている状況とは対照的に, ゲノム配列解析終了を受けて, ポスト・ゲノム配列解析研究が加速している. つまり, ゲノム配列解読は科学的な意義のみならず, その応用が医療や産業と直結しているのである. その中でも, 全ゲノムにわたり存在する一塩基多型SNPをありふれた疾患発症と結びつけて解析していく計画は, ゲノム配列解析以上の激しい国際競争となっている. 一方, ゲノム配列の理解により, 全ての遺伝子機能, 全てのタンパク分子 (プロテオーム) について鳥瞰的に見ることが可能になりつつある. 実際, 全遺伝子発現を包括的に捉えることに可能なDNAチップはまもなく登場すると予測される. このような技術革命は,疾患への応用のみならず,20世紀全体で得られたよりも多くの生物学的情報を, 一回の検査で, われわれにもたらしてくれると期待される.
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