抄録
ヒト臍帯血由来培養好塩基球 (培養好塩基球) はFcεRIを介した刺激によりヒスタミンを遊離する事が報告されている. しかし, IL-4, ロイコトリエンについては未だ検討されていない. そこで, ヒトIgEで感作した培養好塩基球を抗ヒトIgE抗体で刺激し産生されるIL-4, ヒスタミン, 及び, ロイコトリエンについて検討した. 培養好塩基球からのロイコトリエンの経時的産生は, 刺激後1時間以内に最大反応に達した. 一方, IL-4の経時的産生は, 刺激後2時間より認められ6時間で最大反応に達し, 刺激後12時間まで産生の増加は認められなかった. 培養好塩基球からのIL-4の産生は, 12800倍希釈の抗ヒトIgE抗体による刺激で107.2±63.2pg/106好塩基球と最大反応を示したのに対し, ヒスタミン遊離反応は1600倍希釈の抗ヒトIgE抗体による刺激で41.4±4.5%, ロイコトリエン産生反応は1600倍希釈の抗ヒトIgE抗体による刺激で8.3±3.4ng/106好塩基球であった. 培養好塩基球からIL-4の産生を惹起する抗ヒトIgE抗体の至適濃度は, ヒスタミン遊離反応, ロイコトリエン産生反応を惹起する抗ヒトIgE抗体の至適濃度より約10倍低濃度で認められた. 培養好塩基球は, 末梢血好塩基球と同様にIL-4, ヒスタミン, 及び, ロイコトリエンを産生し, 機能的に成熟した好塩基球であると考えられた. 高純度, かつ大量培養が可能な培養好塩基球は, アレルギー性炎症の解明, 及び, 好塩基球からのIL-4の産生のメカニズムの解析に有用であると考えられる.