日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
高周波カテーテルアブレーションで根治した薬剤抵抗性潜在性右前中隔副伝導路の10カ月乳児例
藤田 修平中村 太地臼田 和生渡辺 一洋市田 蕗子畑崎 喜芳
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2012 年 28 巻 2 号 p. 136-142

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抄録
右前中隔副伝導路による房室回帰性頻拍は稀であり, アブレーションによる房室ブロックの危険性も高い. 今回, カテーテルの機械的刺激により容易に伝導の途絶する右前中隔副伝導路に対して, 最小限の高周波カテーテルアブレーションで房室結節障害なく根治し得たので報告する.
症例は10カ月女児. 発熱で受診時に頻脈に気づかれた. 心拍数280 bpmのnarrow QRS頻拍であった. ATP, ベラパミル, フレカイニド, ビソプロロールなどの薬剤に不応であり, 電気的徐細動が頻回になった. 頻拍発作コントロールにアミオダロン持続点滴を必要とし, 高周波カテーテルアブレーション目的に紹介となった. 電気生理学的検査(EPS)では室房伝導(VA伝導)はHis側近傍であったが, 減衰伝導特性を認めなかった. 誘発された頻拍の心房早期部位はHis電位記録部位であったが, リセット現象を認めた. 以上より中隔副伝導路による房室回帰性頻拍が疑われた. 詳細なマッピングによりVA伝導の最早期部位は右前中隔と判明した. 最早期部位でのカテーテルの機械的刺激によりVA伝導は容易に途絶した(bumping). 同部位近傍でHis電位が記録され, テスト通電によりjunctional rhythmが出現した. 機械的な刺激でVA伝導が途絶し, 徐々にVA伝導の再発が少なくなった. Bump現象が認められる部位で通電. VA伝導は完全に途絶し, 以後頻拍は誘発不能となった. 高周波カテーテルアブレーション後の房室結節機能に異常はなかった.
心臓の小さい乳児例においても, 右前中隔副伝導路に対する高周波カテーテルアブレーションは有用であると思われた.
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© 2012 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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