抄録
目的:小児心移植の適応判断に心臓カテーテル検査は必須であるかを, 今回国内心移植登録に至った症例を通じて検討する.
症例:生後4カ月で発症した拡張型心筋症の女児. 19カ月時に急性増悪して入院し, カテコラミン依存性となった. 臓器移植法改正後, 国内心移植の申請を行った. 初回判定は再評価であり, 左冠動脈肺動脈起始症の除外, 肺血管抵抗の正確な測定, 心筋組織検査による代謝性二次性心筋症の除外のため心臓カテーテル検査が必要とされた. 全身麻酔を伴う心臓カテーテル検査・心筋生検はリスクが高いため, 非侵襲的検査を徹底した. 動画で冠動脈の起始異常がないこと, 三尖弁逆流評価により心臓移植適応外となるような肺血管抵抗の異常高値は考えられないこと, 移植を禁忌とする各種先天代謝異常が否定的であること, を説明した. 2回目で適応(コメント付)と判定され移植登録に至ることができたが, なお心臓カテーテル検査が必要とされた.
結論:貴重な移植心を適切なレシピエントに提供するため, 適応の慎重な吟味は当然であり, 動画を用いた評価過程は重要と考えられた. しかし非侵襲的検査により診断が確実なものは, 心臓カテーテル検査を必須とすべきではないと考えられ, 今後, さらにわかりやすいガイダンスの策定が期待される.