抄録
成熟マウス心筋では, Ca2+ transientへの細胞膜Ca2+チャネルと筋小胞体(sarcoplasmic reticulum:SR)の関与は1:9であるのに対し, 未熟心筋では, ほとんどが細胞膜Ca2+チャネルからのCa2+流入に依存しているという報告が多い. これらの報告のほとんどは単離・培養心筋を用いているが, われわれは, より生理的な条件で未熟心筋のSR機能を評価する目的で, マウス胎仔, 新生仔からの摘出心臓をFluo-3で染色, Ca2+ transientを解析した. 筋小胞体Ca2+ATPase(SERCA)阻害剤(thapsigargin)により, 胎生初期からCa2+ transientのTime to 50% relaxation(T50)が有意に延長した. Ca2+放出チャネル(RyR)阻害剤(ryanodine)により, Ca2+ transientの振幅は73%の低下が認められたのに対し, 細胞膜チャネルであるL型Ca2+チャネル, T型Ca2+チャネル, reverse mode Na+-Ca2+ exchanger(NCX)の各阻害薬を添加した場合は, 各々, 34%, 27%, 17%の低下に留まった. また, Caffeine induced Ca2+ transientは胎生初期から計測され, 胎齢が進むに従い増加した. これらの結果から, 胎生期未熟心筋のCa2+ 代謝においても, SRが重要な役割を果たしていることが示唆された.