抄録
わが国の医療保険制度(国民皆保険制度)は世界に誇れる優れたものである.しかし,この保険制度において,小児への適応がない医薬品は適正な医療とみなされず,保険診療において返戻の対象となる可能性がある.実際,この11 年間に薬事法上の承認を受けた医薬品のうち小児適応があるものは20.8%に過ぎず,多くの医薬品が小児には適応がないのが現状である.原則として薬事法上小児適応を有する医薬品が保険適用とされるが,両者は必ずしも同じではない.薬事法上の小児適応はないが医療保険において償還の対象となっているものもかなり存在する.しかしこれらの医薬品では,副作用による健康被害が発生しても救済を受けることができないという事態が発生しうるなどの問題がある.この問題を解決するには,単に健康保険適用だけを目標にするのではなく,治験の推進や臨床試験等で得られるエビデンスに基づく「医学薬学上の公知」により薬事法上の承認を得ていく必要がある.