日本小児循環器学会雑誌
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原著
Sildenafil citrate を用いた両方向性上大静脈肺動脈吻合術後急性期の肺循環管理
打田 裕明根本 慎太郎小澤 英樹本橋 宜和勝間田 敬弘岸 勘太尾崎 智康片山 博視日下 裕介
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2013 年 29 巻 6 号 p. 316-321

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抄録
背景:単心室に対する機能的根治である右心バイパス術の導入にあたる bidirectional cavopulmonary shunt(BCPS)の術後では,急性期に高いtranspulmonary gradien(t TPG上大静脈圧 - 心房圧)に現れる肺循環不全と著しい低酸素血症をしばしば経験する.BCPS後の肺循環管理に選択的肺血管拡張剤であるPDE5阻害薬sildenafil citrate(SIL)を投与した症例の臨床像について調査した.
方法:体外循環離脱直後のTPGが10mmHg 以上かつ純酸素の投与でも十分な酸素化が得られない場合に本治療の適応とした.ICU入室直後より初期投与量0.5mg/kg/ 回で注腸投与を開始した.以後4 時間毎に0.5mg/kg/回ずつ増量した.2mg/kg/回を目標投与量とし,以後4時間毎に継続した.8例(無脾症2例)が対象となった.診断は,両側房室弁左室挿入3例,房室中隔欠損/ 左室低形成3例,純型肺動脈閉鎖1例,修正大血管転位/ 左室低形成1例.手術時年齢;中央値 7.5ヵ月(5~50),体重;中央値 6.5kg( 5.7~13.8),術前平均肺動脈圧;15.3±4.6mmHg,心房圧;7.6±2.3mmHg,TPG;7.8±2.8mmHg.
結果:SILの投与によりTPGはICU入室時の12.6±1.5mmHgから7.4±2.4mmHgに有意に改善した(p<0.05).動脈血酸素分圧/ 吸入酸素濃度比は56.3±18.8から149.2±52.5に有意に改善した(p<0.05).全例でSILによる重篤な副作用の発生はなく,一酸化窒素吸入等の他の肺高血圧治療剤を必要としなかった.
結論:BCPS後急性期の肺循環管理にSILは有効かつ安全な治療法であると示唆された.
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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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