日本小児循環器学会雑誌
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原著
酸素化によるラット動脈管平滑筋細胞からのエラスチン分泌の減少
川上 翔士南沢 享
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2013 年 29 巻 6 号 p. 309-315

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抄録

背景:主肺動脈と下行大動脈を短絡する血管として知られる動脈管は,通常出生後直ちに閉鎖する.血中酸素濃度は出生後に増加する.動脈管ではこの酸素濃度上昇が動脈管平滑筋の収縮を引き起こし,動脈管の機能的閉鎖を生じる.一方,これまでの先行研究では低酸素や酸素投与が血管のリモデリングに影響することが報告されている.そこでわれわれは酸素濃度の上昇が動脈管平滑筋から分泌されるタンパク質を介して血管構造に影響を及ぼしていると仮説を立てた.
方法と結果:われわれはLC-MS/MS解析を行い,低酸素下(酸素1%)および正常酸素下(酸素21%)のそれぞれで培養した,ラット動脈管平滑筋細胞の上清中の分泌タンパク質を網羅的に調べた.その結果,酸素濃度の上昇により動脈管平滑筋細胞から分泌されるエラスチンが減少することを見い出した.RT-PCR解析においても低酸素下から通常酸素下になることで動脈管平滑筋細胞においてエラスチンmRNAの発現が減少することを確認した.
結論:in vitroでの本研究から酸素濃度の上昇によりエラスチンの分泌が減少することを見い出した.エラスチンは内弾性板を形成し血管平滑筋層のエラスチン線維を形成することから,今回の研究は出生後の血中酸素濃度の上昇がエラスチンの分泌を減少させ,出生後の動脈管構造のリモデリングにも影響している可能性を示唆するものである.

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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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