日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
Transhepatic approachでカテーテル治療を行った2例
江原 英治村上 洋介和田 翔佐々木 赳藤野 光洋平野 恭悠川崎 有希吉田 修一朗吉田 葉子鈴木 嗣敏金谷 知潤石丸 和彦前畠 慶人西垣 恭一金澤 景繁
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2014 年 30 巻 3 号 p. 353-359

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抄録
 Transhepatic approachで心臓カテーテル治療を行った2例を報告した.症例1(1歳1ヵ月,体重5.8kg)はファロー四徴,低形成肺動脈,姑息的右室流出路再建術後で,左肺動脈狭窄に対して経皮的血管形成術を行った.両側大腿静脈,右内頸静脈,右鎖骨下静脈の閉塞,および左上大静脈遺残のため,transhepatic approachを選択した.症例2(25歳,体重51kg)は多脾症で,屈曲蛇行した動脈管に対しコイル閉鎖術を行った.大動脈側からの動脈管へのアプロ-チは急角度のため留置用カテーテルの安定した操作が得られず,肺動脈側からのアプローチは下大静脈欠損,右内頸静脈閉塞のため困難で,transhepatic approachを選択した.
 カテーテル治療は全身麻酔・人工呼吸管理下で行い,肝静脈の穿刺・止血は肝臓外科医が施行した.エコーガイド下に右肝静脈を穿刺し,2例とも穿刺回数は1回で穿刺開始から静脈シース留置までは20分であった.2例とも安定したカテーテル操作が得られ,目的としたカテーテル治療を安全かつ有効に実施できた.終了後,綿型酸化セルロース(可吸収性止血剤SURGICEL®)を,シースから透視下に挿入し肝内の穿刺ルートを閉鎖した.シース抜去後は穿刺部よりの出血はなく圧迫は不要であった.術後の腹部エコーで肝内や後腹膜腔に明らかな出血はなく,血液検査でも肝機能の異常はなかった.
 下大静脈欠損や,大腿静脈,内頸静脈などの閉塞のため,通常の穿刺経路からのカテーテルが実施できない例では,transhepatic approachによる心臓カテーテル検査・治療は,有用かつ安全な方法で,選択肢の1つになり得る.止血手技に注意を要するが,体格の小さい乳幼児でも施行可能である.綿型酸化セルロースによる肝内穿刺ルートの閉鎖法は簡便で有用である.なお,肝静脈の穿刺・止血には肝臓外科医などの手技に精通した医療チームの協力が重要である.
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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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