日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
重篤な上大静脈症候群を呈した急性上大静脈血栓閉塞に対して血栓吸引療法により救命できた完全大血管転位術後の乳児例
喜瀬 広亮富田 英藤本 一途藤井 隆成木口 久子大山 伸雄曽我 恭司籏 義仁平田 昌敬伊藤 篤志石野 幸三佐野俊二
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2014 年 30 巻 3 号 p. 360-364

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抄録

 症例は日齢36の男児.胎児心エコーで心房間狭小化を伴う完全大血管転位(Ⅰ型)と診断され,在胎38週3日に出生した.出生当日に緊急で心房中隔裂開術を施行したが遷延性肺高血圧を合併し,日齢2に体外式膜型人工肺(ECMO)を装着した.日齢16にJatene手術を施行しECMOを離脱した.術後から胸水を認めていたが日齢35より乳糜胸水となり排液量も増加した.日齢36に中心静脈圧が急激に上昇し上半身および頭頸部の浮腫が出現したため,同日緊急で静脈造影を施行し上大静脈(SVC)の完全閉塞が確認された.閉塞急性期と判断し右内頸静脈から挿入したガイドワイヤーで閉塞部を通過させ,経皮的血管形成術(PTA)を施行した.PTA後の静脈造影で,狭窄が残存し周囲に血栓形成が疑われたため,シースを閉塞部まで進めサイドポートから血栓吸引を行った.ウロキナーゼを投与後,繰り返し血栓吸引を施行し多量の血栓が吸引された.静脈造影で血栓の消失とSVCの十分な開存を確認し終了した.日齢92に静脈造影を施行しSVCは十分に開存が維持されていた.新生児期のSVC閉塞に対するカテーテル治療は,再狭窄の頻度が高く複数回の治療介入が必要となる場合が多いが,今回,閉塞急性期にPTAと血栓吸引療法を併用することで十分な開存が維持できた.閉塞急性期のSVC閉塞に対して本法は考慮すべき手技と考えられる.

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© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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