日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
Print ISSN : 0911-1794
ISSN-L : 0911-1794
原著
基礎心疾患のない小児期異所性心房頻拍の検討
武智 史恵森島 宏子立野 滋川副 泰隆松尾 浩三丹羽 公一郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2014 年 30 巻 6 号 p. 651-658

詳細
抄録

背景:異所性心房頻拍(ectopic atrial tachycardia:EAT)は,小児期上室頻拍の10〜15%を占めると言われている.その臨床像は多岐にわたり,適切な治療方法も異なる.基礎心疾患を持たない小児期EATの臨床的特徴を明らかにし,治療方針の決定方法について考察することを目的とした.
方法:1998年4月より2013年3月までの間に当院において診療した基礎心疾患を持たない小児期EAT22例を,6歳までに頻拍が自然消失したA群と頻拍が残存したB群に分類し,B群をさらに頻拍出現様式が持続性ないし頻発性のB1群と発作性のB2群に分類し,後方視的に比較検討した.
結果:A群は7例(男児3例,女児4例),B1群は10例(男児5例,女児5例),B2群は5例(男児2例,女児3例)であった.発症年齢は,A群中央値0.3 歳(0〜1.8 歳),B1群中央値10.4 歳(0.9〜15.4 歳),B2群中央値10.4 歳(4.4〜13.5 歳)であり,頻拍出現様式に関係なく,B群において有意に発症年齢が高かった(p = 0.002).A群は全例抗不整脈薬にて頻拍の管理が可能であった.B1群ではしばしば薬物治療不応例を認めた.B2群は全例抗不整脈薬にて頻拍の管理が可能であった.B群に対して全例高周波カテーテルアブレーション(radiofrequency catheter ablation:RFCA)を行い,15例中14例で通電中に頻拍が停止した.起源は,15例中9例(60%)が心耳であり,成人と異なり,心耳に多い傾向を認めた.
結論:胎児期から乳児期に発症する基礎心疾患を有さないEATは自然消失が期待でき,薬物治療が第一選択として望ましい.頻拍が残存する症例の中でも,頻拍の出現様式により,異なる臨床像を呈する可能性が示唆され,さらなる症例の集積が必要と考えた.RFCAの急性期効果は高く,頻拍が残存する症例においては,頻拍誘発性心筋症(tachycardia-induced cardiomyopathy:TIC)を合併することがないよう,RFCAの適応を含め慎重な経過観察が必要である.

著者関連情報
© 2013 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top