2014 年 30 巻 6 号 p. 671-675
新生児Marfan症候群は希少な疾患で,わが国においての文献的報告は12例に留まる.出生直後ないし乳児期早期より特徴的な外表奇形と重篤な心肺機能不全を呈し予後不良である.症例は5歳女児.日齢2に哺乳不良と嘔吐を主訴に他院に入院.クモ様指と老人様顔貌があり,心エコーにて大動脈基部拡大,僧帽弁逆流,僧帽弁逸脱が確認され,新生児Marfan症候群と診断された.日齢26に当科に紹介され,生後1ヵ月よりpropranolol,生後2ヵ月よりlosartanの内服を開始.さらに,利尿薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬を併用していたが僧帽弁閉鎖不全が進行し,5歳時に僧帽弁置換術が施行された.また,経過中,側彎の進行と水晶体亜脱臼がみられた.遺伝子検査でFBN1遺伝子の変異[Gly1013Arg]が認められた.手術所見では,僧帽弁は弁尖が全体に肥厚し,粘液腫様変性を呈していた.弁尖,弁下組織は切除し,St. Jude Medical valve 25 mmで置換した.現在術後1年で,7歳に達し,経過は良好で経過観察中である.新生児Marfan症候群に対するlosartanの有効性の有無については,症例を重ねた検討が必要と思われる.