日本小児循環器学会雑誌
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細胞シート工学による補助ポンプ型立体心筋組織の創生
関根 秀一清水 達也
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 31 巻 3 号 p. 88-94

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抄録

先天性心疾患や虚血性心疾患,拡張型心筋症に伴う重症心不全に対しては,脳死患者からの心臓移植が最終的な治療法となっているが,ドナー不足が大きな問題となっている.また左室補助装置や植込み型人工心臓の使用は,感染や血栓形成などの問題があり長期的な生命維持は困難なのが現状である.そこで近年新たな治療法として再生医療が注目され,これまでに自己筋芽細胞や骨髄由来細胞,あるいは心臓幹細胞を不全心筋組織内へ注入することにより心筋組織を再生させる細胞移植療法がすでに臨床応用されている.しかし,細胞懸濁液注射による治療は移植片の大きさや移植位置の制御の困難さ,移植部からの流出や壊死による細胞の損失が大きな問題となっている.これらの問題を解決するために生体外で細胞を組織化し再生組織として機能不全部位に移植するというティッシュエンジニアリング手法を用いた研究が積極的に進められている.我々は細胞シート工学の技術を用い細胞シートを積層化することによりパッチ状の機能的心筋組織を再生し心筋梗塞部へ移植することで心機能が改善することを示してきた.また次世代の心筋再生医療を目指し補助ポンプとなりうる管心筋組織の作製に取り組んでいる.

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© 2015 特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
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