抄録
背景:純型肺動脈閉鎖(PA/IVS)では様々な程度のsinusoidal communication(SC)が認められる.今回我々はPA/IVS症例でのSCの程度に注目しその変化や予後との関連を明らかにすることを試みた.
方法:1995年から2014年までのPA/IVS連続56症例を後方視的に検討した.新生児期およびフォローアップ時のカテーテル検査所見からSCをgrade分類し,SC gradeとcoronary event発生,運動負荷心電図のST変化,心機能,BNP値,右室圧,右室拡張末期容積との関係,またSCの時間的経過に伴う変化について調べた.
結果:Grade 0, 1, 2, 3, 4の症例はそれぞれ30, 5, 11, 10, 0例存在し,grade 3の2例にcoronary eventによる死亡を認めた.両方向性Glenn手術以降の死亡症例は認めなかった.SCありの症例でcoronary event発生(p=0.025),心電図変化(p=0.0025)が有意に多く見られた.一方,SC gradeと心機能,BNP値,右室圧は関連を認めなかった.自然退縮傾向を認めた症例が3例,狭窄が進行し閉塞した症例は認めなかった.
結論:PA/IVSにおいて冠動脈途絶を認めるgrade 3または4の症例は冠動脈イベントが増加し,死亡率も高くなると予想される.そのため新生児期に可能な限り正確な評価を行い,特に両方向性Glenn手術までは急変のリスクを念頭におき血圧を低下させない管理が必要である.