日本小児循環器学会雑誌
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31 巻 , 6 号
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巻頭言
Reviews
  • 藤井 泰宏, 佐野 俊二
    2015 年 31 巻 6 号 p. 292-298
    発行日: 2015/11/30
    公開日: 2015/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    考えられうる胎児手術の中で,体外循環を用いた胎児手術は最も実現困難で挑戦的な治療法である.現在ではカテーテルによる,先天性心疾患を有する胎児への治療が臨床で実用化され,一部の疾患に対しては,胎児期への治療介入がその後の患児の心臓の発達をより正常な方向へ誘導する可能性が示唆されている.しかしながら,カテーテルで治療介入できる範囲は限定的で,TAPVC, HLHS, PA/IVS, Ebstein奇形等では,外科的手技により,より高度な胎児期治療介入が可能であれば,その後の心臓の発達を改善する可能性があると考えられる.1985年にRichterらが初めて,胎児に体外循環を導入する動物実験を報告し,その後様々な発展を経てきたが,約30年を経過した今でも,未だにヒトに体外循環を用いた胎児手術を行い,成功した例はない.体外循環を用いた胎児心臓手術開発の現況とその可能性について報告する.
  • 藤井 隆成, 富田 英, 大月 審一, 小林 俊樹, 矢崎 諭, 金 成海
    2015 年 31 巻 6 号 p. 301-308
    発行日: 2015/11/30
    公開日: 2015/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    二心室修復における右室流出路に対するステント留置には,Fallot四徴症で術前に姑息的に行われる場合と,術後に右室流出路の人工導管狭窄で導管の寿命延長を目的として行われる場合がある.術後の人工導管狭窄に対しては,2000年代以降に北米から多数例の報告があり,導管寿命を延長する効果が報告されているが,肺動脈弁逆流の増悪,冠動脈圧迫,ステント破壊などの問題がある.海外ではカテーテル的肺動脈弁留置術(Transcatheter pulmonary valve implantation; TPVI)は認可を受けたが,TPVIの適応を満たさない小径の導管では従来のステント留置が行われている.右室流出路の人工導管狭窄に対するステント留置の現状と問題点,日本における同手技の今後の役割に関して概説する.
原著
  • 新井 千恵, 田中 敏克, 亀井 直哉, 小川 禎治, 佐藤 有美, 富永 健太, 藤田 秀樹, 城戸 佐知子, 大嶋 義博, 山口 眞弘
    2015 年 31 巻 6 号 p. 309-312
    発行日: 2015/11/30
    公開日: 2015/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:純型肺動脈閉鎖(PA/IVS)では様々な程度のsinusoidal communication(SC)が認められる.今回我々はPA/IVS症例でのSCの程度に注目しその変化や予後との関連を明らかにすることを試みた.
    方法:1995年から2014年までのPA/IVS連続56症例を後方視的に検討した.新生児期およびフォローアップ時のカテーテル検査所見からSCをgrade分類し,SC gradeとcoronary event発生,運動負荷心電図のST変化,心機能,BNP値,右室圧,右室拡張末期容積との関係,またSCの時間的経過に伴う変化について調べた.
    結果:Grade 0, 1, 2, 3, 4の症例はそれぞれ30, 5, 11, 10, 0例存在し,grade 3の2例にcoronary eventによる死亡を認めた.両方向性Glenn手術以降の死亡症例は認めなかった.SCありの症例でcoronary event発生(p=0.025),心電図変化(p=0.0025)が有意に多く見られた.一方,SC gradeと心機能,BNP値,右室圧は関連を認めなかった.自然退縮傾向を認めた症例が3例,狭窄が進行し閉塞した症例は認めなかった.
    結論:PA/IVSにおいて冠動脈途絶を認めるgrade 3または4の症例は冠動脈イベントが増加し,死亡率も高くなると予想される.そのため新生児期に可能な限り正確な評価を行い,特に両方向性Glenn手術までは急変のリスクを念頭におき血圧を低下させない管理が必要である.
  • 川口 奈奈子, 羽山 恵美子, 古谷 喜幸, 島田 光世, 沖田 圭介, 長嶋 洋治, 竹内 大二, 松岡 瑠美子, 中西 敏雄
    2015 年 31 巻 6 号 p. 313-319
    発行日: 2015/11/30
    公開日: 2015/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:先天性心疾患患者や遺伝性不整脈患者で観察される心電図の波形異常は,心筋細胞におけるチャネルの異常や細胞肥大などによって生じる.我々は,これまでに先天性心疾患患者や遺伝性不整脈患者からEpstein–Barr(EB)ウイルス感染により不死化したB細胞株を樹立し,疾患原因遺伝子ならびにその変異を同定し,マウスモデルなどを用いて変異に関する機能解析を行ってきた.
    目的:疾患特異的induced pluripotent stem(iPS)細胞由来心筋細胞を作製して機能解析を行うため,心疾患患者由来の不死化B細胞株からiPS細胞の作製を行った.
    方法:洞不全症候群患者の不死化B細胞株にマウスp53DD (dominant-negative),ヒトc-MYC, LIN28, SOX2, KLF-4, OCT3/4を電気刺激により導入した.
    結果:遺伝子導入から約3週間の培養後,iPS細胞の形状を示す細胞が観察された.この細胞は,免疫染色の結果,胚性幹細胞(Embryonic stem cell)のマーカーとされる,Oct4, TRA-1-60, SSEA4, Nanog陽性であり,アルカリフォスファターゼ活性が陽性反応を示した.iPS細胞化においても,患者が有する遺伝子変異は保持され,EBウイルスのゲノムはiPS細胞化により消失した.
    考察:疾患特異的iPS細胞が得られた.iPS化においても,疾患遺伝子の変異が保持され,EBウイルスの遺伝子発現が消失することは,ウイルスが影響しない病態モデルが作製可能であると考えられる.
    結論:山中4因子とmp53DD, hLIN28遺伝子を導入して患者由来不死化B細胞から疾患特異的iPS細胞が作製されたことから,病態モデルの作製が期待される.
  • 佐藤 誠, 井上 完起, 石井 卓, 吉敷 香菜子, 稲毛 章郎, 中本 祐樹, 石川 友一, 上田 知実, 嘉川 忠博, 朴 仁三
    2015 年 31 巻 6 号 p. 322-328
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:公共機関の自動体外式除細動器(AED)設置が一般化しつつあり,AEDによるVF survivorの予後に感心が高まっている.しかし先天性心疾患(CHD)を基礎にもつVF survivorの蘇生後経過に関してはほとんど報告がない.
    方法:2006年11月から2012年10月にAEDで蘇生され当院で植込み型除細動器(ICD)植込みを施行されたCHD症例(年齢中央値17.1歳)6例に関して患者背景,ICD作動状況等を検討した.
    結果:基礎疾患はファロー四徴症2例,修正大血管転位症,大動脈弁下狭窄,先天性僧帽弁逆流術後心筋梗塞,冠動脈起始異常が各1例であった.ICD植込みと併行し外科治療介入が5例で行われた.ICD作動状況は追跡期間中央値3.9年で適切作動1例(1回),不適切作動3例(合計8回)であった.全例後遺症なく社会生活に復帰し,追跡期間中死亡例は認めなかった.
    結論:当院ではCHDを基礎にもつVF survivorの診療において,VFの原因となる血行動態の問題点を積極的に治療し,ICD植込みを併行して行う方針としている.全例後遺症なく生存しており,有効な治療戦略と考える.
  • 今井 健太, 藤原 慶一, 吉澤 康祐, 羽室 護, 大野 暢久, 坂崎 尚徳, 佃 和弥
    2015 年 31 巻 6 号 p. 329-337
    発行日: 2015/11/30
    公開日: 2015/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:近年,グルタールアルデヒド処理自己心膜を用いた大動脈弁形成術が注目されている.当院では2004年以降,小児大動脈疾患特に大動脈弁閉鎖不全に対して本術式を採用している.その適応,術式と中期成績について検討を行った.
    対象と方法:2004年9月から2013年12月までに,グルタールアルデヒド処理自己心膜を用いて大動脈弁延長/形成術を行った小児5例を対象とした.手術時年齢は2歳7ヵ月~11歳7ヵ月(中央値5歳0ヵ月)であった.原疾患は,総動脈幹,心室中隔欠損,大動脈縮窄複合,完全大血管転位,先天性大動脈弁閉鎖不全が各1例であった.本術式の適応は,3尖弁で弁の高度な変性が1~2弁に限られる大動脈弁閉鎖不全ないしは総動脈幹弁閉鎖不全とした.術後観察期間は2年0ヵ月~6年7ヵ月(中央値5年0ヵ月)であった.
    結果:手術および遠隔期死亡はなかった.再手術は1例であった.先行開心術が2度ある大動脈縮窄複合の症例で,大動脈弁閉鎖不全および狭窄の進行のため術後4年11ヵ月でRoss-Konno手術を行った.心エコーで大動脈弁閉鎖不全の程度は,術前severe 4例,moderate 1例から術後早期はmild 4例,mild~moderate 1例に改善した.再手術症例を除く4例で,最終観察時点ではmild 2例,moderate 2例で,大動脈弁位での流速は2.5 m/s以下であった.大動脈弁輪径は,術前18.8±4.3 mmから直近21.2±2.6 mmと,全例正常平均値曲線に沿って成長していた.
    結論:小児の大動脈弁疾患に対するグルタールアルデヒド処理自己心膜を用いた大動脈弁形成術は,弁輪の成長が期待でき人工弁置換やRoss手術を行う時期を遅らせることができる有用な術式である.複数回の先行手術を有する症例では自己心膜の肥厚などを認めるため,より慎重な経過観察が必要である.
  • 小泉 淳一, 猪飼 秋夫, 岩瀬 友幸, 熊谷 和也, 鎌田 武, 那須 友里恵, 中野 智, 早田 航, 高橋 信, 小山 耕太郎, 岡林 ...
    2015 年 31 巻 6 号 p. 340-344
    発行日: 2015/11/30
    公開日: 2015/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:新生児乳児期のRastelli型手術では将来の導管交換は必至である.
    目的:当院では姑息術を経て乳児期後期に16 mm自作3弁付きexpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)導管を使用したRastelli型手術を施行している.その中期遠隔成績を検討した.
    方法:対象は2007~2013年までに上記手術を施行した9例.年齢17.3ヶ月,体重8.9 kg,診断DORV,PS4例,PA,VSD,MAPCA4例,PA,VSD1例.
    結果:急性期遠隔期死亡なし.術後平均経過観察期間45ヶ月で導管バルーン拡張術2例(術後47,51ヶ月).うち1例は導管交換術施行(初回手術後78ヶ月,バルーン拡張後27ヶ月).導管交換例を除いた,最新のエコー所見は導管内圧較差0~20 mmHg:4例,21~40 mmHg:4例,41 mmHg以上:0例,導管内逆流は微量:4例,軽度:2例,中等度:2例.
    結論:乳児期後期Rastelli型手術における16 mm自作3弁付きePTFE導管の中期遠隔成績は許容できるものであった.導管狭窄に対するバルーン拡張術は導管交換を遅延できる可能性が示唆された.
症例報告
  • 田部 有香, 安田 謙二, 中嶋 滋記, 藤本 欣史, 山口 清次
    2015 年 31 巻 6 号 p. 347-351
    発行日: 2015/11/30
    公開日: 2015/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    左心耳瘤(left atrial appendage aneurysm, LAAA)は,1938年にSemansとTaussigにより初めて報告された非常に稀な疾患で,先天性のものの多くは原因不明である.小児期に無症状で発見されると,将来的な不整脈,胸痛,呼吸困難,血栓塞栓症などの合併症予防のために外科的切除を行う.今回我々は,急性気管支炎の際に胸部レントゲン写真で異常を指摘された2歳女児におけるLAAAの症例を経験した.経胸壁エコー,経食道エコー検査を行い,瘤内や心耳内血栓を否定した.また造影CTにて周囲に異常構造がないことを確認した.手術により切除した病理組織において,三層構造は保たれていたが,筋層の菲薄化と粘液性変化がみられた.恒常性を維持させられないほどの組織障害が生じたことが,瘤の原因となりえた可能性が示唆された.
  • 本間 友佳子, 早渕 康信, 阪田 美穂, 香美 祥二
    2015 年 31 巻 6 号 p. 352-357
    発行日: 2015/11/30
    公開日: 2015/12/23
    ジャーナル オープンアクセス
    Endoglin遺伝子(ENG)変異(p. Ala160del, c.479_481 delCTG; ex4)を有した遺伝性出血性毛細血管拡張症に合併した両側肺全区域びまん性肺動静脈瘻の女児例を経験した.9歳で診断され,5年間に5回のカテーテル治療を施行した.コイル塞栓術直後はSpO2 90%以上に上昇するが徐々に80%程度まで繰り返し低下していた.びまん性肺動静脈瘻は,瘻内や流入動脈の塞栓では新たな瘻への流入血管が再度出現・増悪し,瘻への流入血流が増加する.瘻内のみへのコイル塞栓では血流阻害が不十分と考え,以降は正常肺動脈を犠牲にしてコイル塞栓術を施行した.正常肺血管の塞栓は肺血管床を減少させ,肺高血圧を惹起するため最小限にとどめることに留意した.治療後はSpO2 90%以上を維持し,肺高血圧症は認めていない.治療に難渋する肺動静脈瘻では正常肺を犠牲にすることを前提としたカテーテル治療も1つの選択肢と考えられた.今後は長期的な肺高血圧症の発症も含めて,慎重な経過観察が必要である.
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