日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
胎児心エコー所見をもとに早期娩出し救命できたハイリスク仙尾部奇形腫の胎児例
髙橋 実穂 堀米 仁志加藤 愛章野崎 良寛林 立申中村 昭宏齋藤 誠濱田 洋実瓜田 泰久須磨﨑 亮
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2016 年 32 巻 4 号 p. 328-334

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抄録

充実性の巨大な胎児仙尾部奇形腫は高心拍出性心不全を伴いやすく,胎児水腫に至ると致死率が上がる.急速に増大した仙尾部奇形腫を伴う胎児に対し,胎児心エコー所見に基づいて早期娩出を計画し,分娩直後に腫瘍摘出術を施行し,合併症なく救命できた胎児例を報告する.症例は妊娠19週の胎児.妊娠28週から30週にかけて腫瘍長径が11.2 cmから15.6 cmへと急速に増大した.胎児MRIでは腫瘍は充実性優位で骨盤腔内への進展のないタイプ(Altman I型)であった.30週の胎児心エコーでは胎児水腫はないが,両心拍出量は1,350 mL/kg/minと著明に増加していた.経時的に胎児心エコーを施行し,心拡大の進行,右室収縮能の低下,三尖弁閉鎖不全の出現,心拍出量の分布の変化を契機に32週3日に帝王切開と腫瘍摘出術を施行した結果,後遺症なく胎児を救命することができた.ハイリスクの胎児仙尾部奇形腫は治療介入のタイミングが胎児の予後を左右するため,胎児心エコーによる継時的な血行動態評価が不可欠と考えられた.

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© 2016 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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