日本小児循環器学会雑誌
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32 巻 , 4 号
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巻頭言
Reviews
  • 門間 和夫
    2016 年 32 巻 4 号 p. 261-269
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    動脈管は胎生期に特有の血管で出生後肺循環の確立と同時に速やかに閉鎖する.生後に閉鎖しないと動脈管開存症となる.新生児動脈管の生理的閉鎖機序は酸素によることが1950年までに確定し,1973年にはプロスタグランジンの動脈管拡張作用,1974年には非ステロイド性抗炎薬の動脈管収縮作用が発見された.未熟児動脈管開存症の閉鎖薬として1976年にインドメサシンが使われ,同年に私が始めた全身急速凍結法実験の結果から,その後イブプロフェン,アセトアミノフェンが使われてきた.1993年に糖尿病薬スルホニル尿素薬のグリベンクラミドが動脈管平滑筋KATPチャネルを介して兎胎仔動脈管切片を収縮することが中西敏雄教授により発見された.その第一世代ラスチノン,クロルプロパミドは1960年代初頭に妊娠糖尿病に使用され,高率の胎児死亡を生じた.私の実験では大量投与でラット胎仔動脈管は閉鎖するが,臨床量での動脈管収縮は軽度なので,妊娠糖尿病の経過中に解熱剤,鎮痛剤の併用で動脈管が閉鎖して胎児死亡を起こしたと推定される.グリベンクラミドの動脈管収縮作用はラット胎仔実験上用量依存性で,未熟胎仔の収縮は成熟胎仔よりやや弱い.臨床常用量(1 mg/kg)では胎仔動脈管内径は30%縮小し,大量投与(100 mg/kg)で胎仔動脈管は完全に閉鎖する.グリベンクラミドは親ラット保育中の生後1日のラット新生仔に大量胃内投与しても低血糖以外の副作用が全くないので,低血糖予防にブドウ糖を併用すればインドメサシン効果不十分例の未熟児動脈管閉鎖薬になるだろう.

  • 松井 彦郎
    2016 年 32 巻 4 号 p. 270-276
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    Fetal Cardiac Intervention(侵襲的胎児心臓治療)は,この20年間で欧米を中心に進歩してきた.形態異常による胎内で不可逆性の心血管変化を予防することを目的とし,その技術・適応・効果が世界中の胎児心臓医の挑戦により徐々に明らかになってきている.治療法は経母体腹壁から直接心臓を穿刺して行われ,胎児に対する侵襲度・術者の技術的ハードルは高い.治療は重症大動脈弁狭窄症,心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症,心房間交通狭小化を呈する左心低形成症候群といった重症先天性心疾患が対象となる.疾患により適応・効果は異なり,治療の有効性は更なる解明が必要である.Fetal Cardiac Interventionは胎児心臓病学の一端を担う分野であり,本邦における早急の体制整備・治療開始が望まれる.

  • 増谷 聡, 先崎 秀明
    2016 年 32 巻 4 号 p. 277-290
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    心不全症状は,心拍出量低下,あるいはうっ血による.代償機転により心拍出量は概ね保たれるため,症状の多くはうっ血による.うっ血をもたらすのは負荷の異常,あるいは機能,特に拡張能の異常である.先天性心疾患の一部では,これらの異常を併せ持つため,機能と負荷を独立して,かつ統合して考える心室圧容積関係による分析的思考が病態把握,治療選択,治療効果予測に有用である.拡張能は,駆出率でおよそ語ることのできる収縮能と異なり,拡張期左室の弛緩と充満を一つの指標で概観することができない.さらに心エコーの拡張能指標は拡張能そのものではなく,さまざまな限界が明らかにされている.しかし,評価が難しくても,拡張能は重要である.通常の心臓カテーテル検査で,あるいはベッドサイドで非侵襲的に拡張能を把握するにはどうしたらよいだろうか? 圧容積関係と左室流入動態の理解,弛緩と充満を規定する左室stiffnessの概念理解,通常の評価法がにゴールドスタンダード評価にどこまで迫れているかの理解が必要である.その上で総合判断すれば,一見難解な拡張能はおおよそ評価可能である.本稿はこれらを概説し,先天性心疾患術後にみられる駆出率の保たれた心不全の病態と併せ,まとめたい.

  • 石川 友一
    2016 年 32 巻 4 号 p. 291-306
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,心臓MRIは技術的革新が急速に進み,撮影技術や装置の進歩に伴って,さまざまな臨床応用方法が編み出され,無限の広がりを見せている.そのうちのいくつかは,十分な実測値の裏付けを基に,すでに日常臨床に汎用されている.これらの進歩と経験の蓄積により,CMRは,局所壁運動や心室収縮能,先天性心疾患の血行動態,心筋梗塞の検出やviability確認,心外膜疾患や心臓腫瘍評価の標準的検査となった.小児循環器医がCMRを十二分に活用するためにまず把握しておく点は以下6点である.

    1)被曝がなく低侵襲

    2)心エコーと異なり見えない場所がない(Window制限がない)→正確な容積・心室機能評価が可能.

    3)あらゆる血管の血流量が計測できる

    4)非造影で3D形態把握が可能

    5)心筋性状がわかる

    6)欠点は,低機動性,磁性体,労力(熟練を要する).

    ここではCMRの技術的側面・運用方法と小児患者に用いる際に考慮すべき要点について解説する.

原著
  • 石井 卓, 嘉川 忠博, 矢崎 諭, 斉藤 美香, 稲毛 章郎, 浜道 裕二, 上田 知実, 和田 直樹, 安藤 誠, 高橋 幸宏, 朴 仁 ...
    2016 年 32 巻 4 号 p. 307-313
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    背景:本研究の目的は,TCPC conversion手術の中期成績および効果を明らかにすることである.

    対象と方法:2004年1月から2013年12月の間に当院でTCPC conversionを行った35例を後方視的に検討した.術前に高度の心不全,腎不全,肝硬変を認めた症例はなかった.また,35例中18例(51.4%)でなんらかの追加術式が行われていた.

    結果:周術期に合併症を認めた症例は25例(71.4%)で,うち10例は上室性頻拍であった.周術期死亡は1例のみで退院後の死亡例は認めなかった.退院後の心血管event free survivalは5年で75.0%だった.NYHA classおよび不整脈頻度は術後に有意な改善を認めたが,術中不整脈治療の有無による周術期および退院後の上室性不整脈頻度の比較では有意差を認めなかった.術前後の心臓カテーテル検査では心係数(術前2.19±0.51 L/min/m2 vs術後2.85±0.84 L/min/m2p<0.01)および中心静脈圧(術前13.1±3.0 vs術後11.4±3.4, p<0.02)の有意な改善を認めた.

    結論:TCPC conversionは全身状態が良い症例では安全に施行可能で,血行動態および症状の改善が期待できる.

症例報告
  • 若宮 卓也, 志水 直, 中野 裕介, 鉾碕 竜範, 岩本 眞理, 合田 真海, 町田 大輔, 磯松 幸尚, 益田 宗孝
    2016 年 32 巻 4 号 p. 314-318
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    心臓原発の炎症性筋線維芽細胞腫(inflammatory myofibroblastic tumor: IMT)は極めてまれであり,臨床像もよく分かっていない.我々は嘔吐を主訴に受診した3か月の女児で,心エコー検査で右房内を占拠する巨大腫瘤と多量の心嚢液貯留が確認され,病理診断の結果より炎症性筋線維芽細胞腫と確定診断した症例を経験したので報告する.心タンポナーデへの進行が危惧されたため,緊急で腫瘍摘出術を施行した.本症例では血清IL-6値の上昇も認め,粘液腫と類似の臨床像を呈していた.IMTは悪性化の可能性も指摘されているため,右房内腫瘤の鑑別としてIMTも考慮する必要があり,その診断には病理所見が重要である.

  • 野村 羊示, 倉石 建治, 山田 佑也, 太田 宇哉, 西原 栄起, 田内 宣生
    2016 年 32 巻 4 号 p. 323-327
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    不整脈原性右室心筋症(Arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy: ARVC)は,心内血栓を生じることがある.ワーファリン治療の場合が多く,新規経口抗凝固薬(Novel oral anticoagulants: NOAC)による治療の報告は少ない.症例は30歳男性で,15歳時にARVCと診断され,16歳時より心不全治療のためカルベジロール,エナラプリルの内服を開始した.30歳時の外来受診時の心臓超音波検査で右心室内血栓を認めた.ワーファリンと未分画ヘパリンを開始したが,血栓の大きさは変わらなかった.第3病日にダビガトラン300 mg/日へ変更し,5週後に血栓は消失した.ARVCの心内血栓治療にダビガトランが有用である可能性がある.また,適切な抗凝固療法により血栓塞栓症や突然死などの重大な合併症を予防できる.

  • 髙橋 実穂, 堀米 仁志, 加藤 愛章, 野崎 良寛, 林 立申, 中村 昭宏, 齋藤 誠, 濱田 洋実, 瓜田 泰久, 須磨﨑 亮
    2016 年 32 巻 4 号 p. 328-334
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    充実性の巨大な胎児仙尾部奇形腫は高心拍出性心不全を伴いやすく,胎児水腫に至ると致死率が上がる.急速に増大した仙尾部奇形腫を伴う胎児に対し,胎児心エコー所見に基づいて早期娩出を計画し,分娩直後に腫瘍摘出術を施行し,合併症なく救命できた胎児例を報告する.症例は妊娠19週の胎児.妊娠28週から30週にかけて腫瘍長径が11.2 cmから15.6 cmへと急速に増大した.胎児MRIでは腫瘍は充実性優位で骨盤腔内への進展のないタイプ(Altman I型)であった.30週の胎児心エコーでは胎児水腫はないが,両心拍出量は1,350 mL/kg/minと著明に増加していた.経時的に胎児心エコーを施行し,心拡大の進行,右室収縮能の低下,三尖弁閉鎖不全の出現,心拍出量の分布の変化を契機に32週3日に帝王切開と腫瘍摘出術を施行した結果,後遺症なく胎児を救命することができた.ハイリスクの胎児仙尾部奇形腫は治療介入のタイミングが胎児の予後を左右するため,胎児心エコーによる継時的な血行動態評価が不可欠と考えられた.

  • 佐藤 工, 佐藤 啓, 高橋 徹
    2016 年 32 巻 4 号 p. 338-343
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    QT延長症候群(LQTS)は,致死的不整脈であるTorsade de Pointes(TdP)による失神とともに強直間代性けいれんを伴う場合があり,脳波異常の有無にかかわらずてんかんと誤診される症例が少なくない.症例は失神歴のない7歳男児.小学校1年時の心電図検診でQT延長を指摘され,姉もQT延長を指摘されていたことから遺伝子検査を施行したところ,姉弟ともに同じKCNQ1ミスセンス変異を認めLQTS1型と診断された.運動制限とβ遮断薬の投与で経過観察されたが,10歳と12歳時にともに就眠時に意識消失を伴う強直性けいれんを認めた.いずれも意識回復は速やかで,TdTは同定されなかった.1度目の発作後の脳波は異常なかったが,2度目の発作後の脳波で左側中心側頭部領域にspikeを認めた.発作の間隔や頻度を勘案し,意識回復は速やかで神経学的後遺症も遺していないことから,抗てんかん薬を投与せずに経過をみたところ,以後2年間発作はみられていない.本症例の2度の失神発作は,典型的には主として運動を契機に発症するとされるLQTS1型の発作とは異なり,発作間欠時脳波所見から局在関連てんかんの合併が疑われた.失神歴を有するもTdPが同定されていないLQTSに対して脳波検査を繰り返し施行し,脳波異常の有無を明確にすることは,抗てんかん薬を含む適切な薬物療法を提供し,不適切な運動管理指導を回避する上で有意義である.

  • 小林 智恵, 朴 仁三, 嘉川 忠博, 上田 知実, 中本 祐樹, 稲毛 章郎, 吉敷 香菜子, 佐藤 正規, 高橋 幸宏, 安藤 誠, 和 ...
    2016 年 32 巻 4 号 p. 344-349
    発行日: 2016/07/01
    公開日: 2016/08/06
    ジャーナル オープンアクセス

    Fontan循環における肺循環へ血液を拍出する心室を欠く特殊性による中心静脈圧(CVP)の上昇,心拍出量低下はタンパク漏出性腸症(PLE)の発症要因と考えられている.我々は開窓部閉塞を契機にPLEを発症し,prednisolone(PSL)による寛解後,直ちに血行動態を評価し血管拡張療法を強化したところ,寛解を維持したままPSLを中止し得た2症例を経験したので報告する.2症例ともPLE寛解直後のカテーテル検査で心係数(CI)と右室駆出率(RVEF)の低下,体血管抵抗(SVR)と右室の拡張能を表すと考えられる右室拡張末期圧(RVEDP)/CIの上昇が認められた.右室拡張障害の改善を主目的としてβ遮断薬(BB),アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi),アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB),spironolactone(SPL)の併用療法を強化したところ,PSL中止時にはSVR, RVEDP/CIは低下しCI, RVEFは改善していた.PLE発症には心拍出量低下への反応であるSVR上昇と,それによる体循環心室機能低下が関与するものと推測された.また,交感神経系抑制薬とrenin–angiotensin–aldosterone(RAA)系抑制薬の併用療法は,Fontan手術後に発症するPLE治療の一選択肢と考えられた.

Images in Pediatric and Congenital Heart Disease
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