2016 年 32 巻 6 号 p. 451-461
右心室と左心室が並列循環をなしている正常児の胎児循環の特徴は,胎盤を有し,胎盤で酸素化が行われているため肺循環の必要性が少ないことである.このため,胎児循環には1つの心内短絡(卵円孔)と2つの心外短絡(静脈管,動脈管)が存在する.右心室からの血流はそのほとんどが動脈管を介して肺動脈から下行大動脈へと流れ,肺に循環する血液はわずかである.このため胎児心機能を評価するには3つの短絡と胎盤を含めた右心系の評価が重要である.妊娠後半になると肺血流量は前半の4倍に増加する.正常胎児の左心室は総心拍出量の45%を担い,出生後は胎児期の2~3倍に増加する.このような胎児循環の特徴を理解することは,出生後の心疾患の血行動態を理解するのに重要である.