日本小児循環器学会雑誌
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32 巻 , 6 号
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巻頭言
Review
  • 稲村 昇
    2016 年 32 巻 6 号 p. 451-461
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル オープンアクセス

    右心室と左心室が並列循環をなしている正常児の胎児循環の特徴は,胎盤を有し,胎盤で酸素化が行われているため肺循環の必要性が少ないことである.このため,胎児循環には1つの心内短絡(卵円孔)と2つの心外短絡(静脈管,動脈管)が存在する.右心室からの血流はそのほとんどが動脈管を介して肺動脈から下行大動脈へと流れ,肺に循環する血液はわずかである.このため胎児心機能を評価するには3つの短絡と胎盤を含めた右心系の評価が重要である.妊娠後半になると肺血流量は前半の4倍に増加する.正常胎児の左心室は総心拍出量の45%を担い,出生後は胎児期の2~3倍に増加する.このような胎児循環の特徴を理解することは,出生後の心疾患の血行動態を理解するのに重要である.

  • 新居 正基
    2016 年 32 巻 6 号 p. 462-472
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル オープンアクセス

    三次元心エコーの出現により房室弁複合体のような複雑な構造体においても,その三次元的な位置関係や連携運動の評価が可能となった.弁輪・弁尖・腱索・乳頭筋の位置情報を一心周期にわたり三次元的に把握することで,弁輪・弁尖の形態変化や乳頭筋の位置異常が弁機能に及ぼす影響などについての研究がこれまでに数多く報告されている.1980年代において既に二次元エコープローブの軸を固定し,軸の周囲を一心拍ごとに少しずつ回転させる方法を用いて房室弁輪の三次元運動を解析した報告が行われている.その後2000年代に入り,リアルタイム三次元心エコーや経食道三次元心エコーが実臨床で使用可能となったことで,三次元心エコーの有用性についての認識が急速に広まった.三次元エコーでの画像表示にはvolume rendering法とmulti-planar reconstruction法の2種類があり,用途に応じて使い分ける必要があるが,前者は弁形態の全体像把握に優れ,後者はより詳細な検討や定量評価に威力を発揮する.これまでに主に三次元心エコーを用いて行われてきた房室弁機能評価について概説するとともに,将来の展望についても記した.

  • 瀧聞 浄宏
    2016 年 32 巻 6 号 p. 473-484
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル オープンアクセス

    2Dスペックルトラッキング法は,心エコー法による心機能評価法の比較的新しい方法のひとつである,超音波画像上のスペックルをフレームごとに追跡して,その位置情報から心筋の歪み:ストレイン値を測定する方法で,壁運動異常の定量評価を可能にした.近年では心不全の予後予測,種々の心筋病変に対する早期心筋障害検出に有用であることも明らかになってきた.小児ではまだ少数例の検討でしかないが先天性心疾患におけるストレイン値に関する報告が散見される.最新の超音波診断装置では,簡便に,精度よくスペックルトラッキング法によるストレイン測定が行うことができ,今後の臨床応用が小児循環器の領域でも期待される.本稿では2Dスペックルトラッキング法について,基本的な概念から方法論,そして最新の知見を小児の分野も含めて概説する.

  • 鮎沢 衛
    2016 年 32 巻 6 号 p. 485-497
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル オープンアクセス

    学校管理下の心臓系突然死は,1980年代には発生率約0.5件(/10万生徒・年)であったが,徐々に減少し,2010年以降は0.1件(/10万生徒・年)未満まで低下した.その要因として,学校教職員による救急救命処置とくにAEDの使用効果が大きいと考えられる.原因疾患の一部は学校心臓検診などにより事前に予想された例もあるが,発症前の病歴や検診では異常なく,予期されない心停止として発症し,解剖を行っても原因不明の例が多い.その中には致死的遺伝性不整脈の例が多いと考えられ,解明のため遺伝的情報を集める体制を策定する必要がある.また,現在の心臓検診で発見できない疾患が解剖で判明することもあり,監察医制度の意義は大きいが,日本では地域が限定されている問題があり,剖検で発見されやすい疾患に焦点を当てて検診方法を見直す必要もあろう.心臓系突然死の減少傾向は明らかになったが,中枢神経疾患や,乳幼児突然死症候群に分類される事例については,まだ病態の解明と対策は十分とは言えない.これらの課題に対して,日常診療や検診による危険性予知と,救命措置の充実との両面から,突然死の克服が更に進むことが望まれる.

原著
  • 石垣 瑞彦, 金 成海, 松尾 久実代, 鬼頭 真知子, 藤岡 泰生, 櫨木 大祐, 濱本 奈央, 佐藤 慶介, 芳本 潤, 満下 紀恵, ...
    2016 年 32 巻 6 号 p. 498-508
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル オープンアクセス

    背景:立体的な病変の把握が大切な先天性心疾患において,三次元撮影はその精度を大きく向上させうるツールである.当院では,2013年より3D Rotational Angiography(3DRA)を導入し,病変の立体的な把握およびInterventionに利用している.

    目的:3DRAの小児循環器領域での有用性を報告する.

    方法:はじめに当院で3DRAを施行した24症例を対象として,小児循環器領域での有用性を後方視的に検討した.次に2010年1月~2016年6月に当院でRastelli術後の肺動脈狭窄に対して経皮的バルーン血管形成術を施行した46例から,3DRAもしくはCTを併用しかつ治療対象が一病変であった15例を抽出(3DRA群5例,CT群10例)し手技時間,透視時間,造影剤使用量,被曝線量を比較検討した.

    結果:3DRAの対象血管は肺動脈22例/大動脈2例で,全例評価可能であった.画像評価として従来法を上回る‘essential/very useful’は全体の75%で,特に複雑な形態の血管の描出に優れていた.被曝線量は,対象血管が肺動脈の場合,3DRA1回は二方向性血管撮影2.8回に相当した.血管拡張術は13例(バルーン血管形成術11例,ステント留置2例)で,うち5例では,3DRA画像をもとに全セッションsingle plane使用であった.CT群との比較では,手技時間,透視時間,CTを除く造影剤使用量,被曝線量は同等であった一方で,総造影剤使用量は3DRA群3.9 mL/kg: CT群5.9 mL/kg(p=0.003)であった.

    結論:3DRAは,小児循環器領域でも安全に施行可能で従来法にはない広角的,立体的な画像構築により,より客観的な診断,評価に寄与する可能性が示唆された.さらにインターベンションにおいては,手技時間,透視時間,造影剤使用量,被曝線量などの面で従来法と比べ遜色なく,CT併用群に比し総造影剤使用低減が可能であった.

症例報告
  • 保土田 健太郎, 枡岡 歩, 宇野 吉雅, 岩﨑 美佳, 岡田 公章, 加藤木 利行, 鈴木 孝明
    2016 年 32 巻 6 号 p. 512-515
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル オープンアクセス

    第5大動脈弓遺残は非常に稀な先天性血管異常であるが,これが狭窄を来すことで大動脈縮窄症と同様の臨床経過を示す.今回,第5大動脈弓縮窄と第4大動脈弓離断の合併例を2例経験した.症例1は日齢15にductal shockで発症し当院に転院,第5大動脈弓縮窄と第4大動脈弓離断(Type A)の合併と診断され,翌日緊急手術を実施した.症例2は日齢7に上下肢の血圧差を認め大動脈縮窄を疑われて当院に紹介され,第5大動脈弓縮窄と第4大動脈弓離断(Type B)の合併と診断された.左椎骨動脈から左鎖骨下動脈への逆行性血流により下行大動脈が灌流されていたため,待機的手術を日齢14に実施した.いずれも動脈管組織を切除し,第5大動脈弓近位側組織の一部を利用して大動脈再建を行った.症例2に対しては術後2か月目にバルーン拡大術を要したが,その後大動脈の発育は良好である.それぞれ術後11か月,10か月が経過し,いずれも上下肢の血圧差,吻合部狭窄を認めない.切除した第5大動脈弓の組織学的所見は正常大動脈壁と相違なく,中枢側第5大動脈弓は大動脈弓再建に利用できる可能性が示唆された.

  • 山本 英範, 大橋 直樹, 西川 浩, 武田 紹, 吉田 修一朗, 鈴木 一孝, 大森 大輔, 佐藤 純, 櫻井 一, 野中 利通, 櫻井 ...
    2016 年 32 巻 6 号 p. 518-523
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル オープンアクセス

    10か月健診時の心雑音を契機に動脈管開存症(PDA),肺高血圧症(PH)と診断されて当院を受診した.12か月時に当院にて経皮的経カテーテル動脈管閉鎖術を施行したところ経胸壁心臓超音波検査にて心機能低下,血液生化学検査にて心筋逸脱酵素の上昇,心電図にて異常Q波が出現した.経胸壁心臓超音波検査再検にて主肺動脈からの左肺動脈起始を確認し左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)と診断し,開胸手術を行った.ALCAPAは典型的には生後8週頃に肺血圧の低下に伴い左冠動脈の潅流が不良となり心不全を発症する疾患であるが,動脈管開存症(PDA)をはじめとした肺血流増多疾患を合併した場合,左冠動脈の潅流が維持されるため乳児期の心不全発症を免れうる.このためPDAを合併したALCAPAは動脈管閉鎖前の診断が極めて困難であるが,未診断下に動脈管閉鎖術を施行した場合に急激に左冠動脈潅流が悪化して心不全を発症することがある.PH合併PDAの症例では,経皮的経カテーテル動脈管閉鎖術前に冠動脈奇形も念頭に経胸壁超音波検査を行い,それでも否定できない場合は閉鎖前に左室造影や上行大動脈造影を考慮するべきである.

  • 松裏 裕行, 直井 和之, 池原 聡, 高月 晋一, 中山 智孝, 原 英彦, 佐地 勉, Farhouch Berdjis
    2016 年 32 巻 6 号 p. 527-533
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は米国籍の32歳男性で,息切れを主訴に来院した.米国で出生し完全大血管転位の診断でRastelli手術,2度の右室流出路再建術および胸郭形成術の既往がある.その後再び右室流出路狭窄が高度になったため,24歳の時ニューヨークでMelody valve留置術を受けた後に来日した.当院受診時,第三肋間胸骨左縁を最強点とするLevine 3度の収縮期駆出性雑音を聴取し,胸部単純X線では胸郭形成術の際に植え込まれた3枚の金属プレートを認めた.心エコーでは心室中隔の奇異性運動と圧排された左室を認め,右室–右房圧較差は55~60 mmHgであった.血漿hANPとBNPは各々54.1,54.7 pg/mLと軽度上昇していた.数度の手術歴から外科的右室流出路再建術は危険性が高いと考えたが,幸いロサンゼルスでvalve-in-valve法によるMelody valve再留置術を受けることができ,1ヶ月後に再度来院した.術前胸部単純X線正面像では明らかではなかったが,カテーテルインターベンション時にステント損傷が右室流出路再狭窄の原因であることが確認された.本邦においてもMelody valveの認可が待たれる.

  • 加藤 おと姫, 吉澤 康祐, 藤原 慶一, 植野 剛, 鷄内 伸二, 坂崎 尚徳
    2016 年 32 巻 6 号 p. 534-539
    発行日: 2016/11/01
    公開日: 2016/12/31
    ジャーナル オープンアクセス

    何らかの要因で小児期にFontan手術に到達せず,成人期に至った症例が存在する.一方,成人期におけるFontan手術の適応と治療戦略,その予後に関しては未だ明らかではない.症例は僧帽弁閉鎖,完全大血管転位,心室中隔欠損,肺動脈弁下部狭窄の女性.肺高血圧のため小児期からFontan手術非適応として経過観察されていた.40歳時に肺生検を含めた再評価を行い,段階的にFontan手術に到達することができた.また,Fontan手術後に出現した房室弁逆流の増悪と同期不全によるFontan循環不全に対して,房室弁置換と心臓再同期療法を行い,心不全が改善した.心臓再同期療法は機能的単心室でも有用な治療法となりうる可能性が示唆された.

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