2016 年 32 巻 6 号 p. 485-497
学校管理下の心臓系突然死は,1980年代には発生率約0.5件(/10万生徒・年)であったが,徐々に減少し,2010年以降は0.1件(/10万生徒・年)未満まで低下した.その要因として,学校教職員による救急救命処置とくにAEDの使用効果が大きいと考えられる.原因疾患の一部は学校心臓検診などにより事前に予想された例もあるが,発症前の病歴や検診では異常なく,予期されない心停止として発症し,解剖を行っても原因不明の例が多い.その中には致死的遺伝性不整脈の例が多いと考えられ,解明のため遺伝的情報を集める体制を策定する必要がある.また,現在の心臓検診で発見できない疾患が解剖で判明することもあり,監察医制度の意義は大きいが,日本では地域が限定されている問題があり,剖検で発見されやすい疾患に焦点を当てて検診方法を見直す必要もあろう.心臓系突然死の減少傾向は明らかになったが,中枢神経疾患や,乳幼児突然死症候群に分類される事例については,まだ病態の解明と対策は十分とは言えない.これらの課題に対して,日常診療や検診による危険性予知と,救命措置の充実との両面から,突然死の克服が更に進むことが望まれる.