日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
緑膿菌市中肺炎に敗血症性ショックを合併しVA ECMOで救命したFontan術後の1例
佐藤 誠安孫子 雅之小田切 徹州松木 淳三井 哲夫
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2017 年 33 巻 1 号 p. 50-57

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抄録

症例は33歳女性.肺動脈閉鎖症,両大血管右室起始症で12歳時にFontan手術を受けた.経過良好でクリニック看護師として就労していた.入院2日前から易疲労感があり,呼吸困難感が増悪したため,入院当日の夜間に山形大学医学部附属病院へ救急搬送された.来院時の意識は概ね清明で,著明な湿性咳嗽を認めた.大葉性肺炎の診断でICUに入室し,循環維持目的にドブタミン,カルペリチドで治療を開始した.数時間でショックになったため容量負荷,ノルアドレナリンで治療を行ったが,不整脈から意識障害をきたし,気管挿管を要した.昇圧剤,容量負荷,ステロイド静注,一酸化窒素吸入に反応しない低血圧が遷延し循環不全に陥ったため,入院3日目にVA ECMOを導入した.ECMO導入後に入院時血液培養,喀痰培養の結果が判明し,緑膿菌市中肺炎,敗血症と診断した.心機能障害は徐々に改善し,敗血症性心筋症と診断した.入院14日目にECMOを離脱し,入院54日目に退院した.退院前頭部CTでは,低酸素や虚血の影響を示唆する所見を認めなかった.本報告は,緑膿菌市中肺炎,敗血症性ショックをきたしたFontan術後症例を救命し得た,初めての報告である.

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© 2017 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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