日本小児循環器学会雑誌
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33 巻 , 1 号
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巻頭言
Review
  • 門間 和夫
    2017 年 33 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス

    高尾教授は1976年にFallot四徴症と特異顔貌と鼻声の合併として円錐動脈幹異常顔貌症候群を発見し,1984年にはこの症候群に胸腺低形成と免疫不全があることを発見した.1992年にはBurn教授との共同研究でこの症候群の染色体22q11の微細欠失を証明した.1993年には末梢血リンパ球FISH法で22q11欠失検査を開始し,22q11欠失症の先天性心疾患の全体像が明らかになった.本症候群の80%に先天性心疾患が合併し,その内訳は多い順に各種のFallot四徴症(約30%),大動脈弓離断(約15%),総動脈幹残遺(約15%),心室中隔欠損症(約15%)である.本症候群の先天性心疾患には特徴的に大血管異常が合併する.即ち,Fallot四徴症の半数は肺動脈閉鎖を合併し,その大部分で動脈管を欠如して体肺側副動脈(MAPCA)を合併する.本症のFallot四徴症には大動脈とその分枝動脈の異常(右側大動脈弓,鎖骨の高さに達する大動脈弓,動脈管欠損,肺動脈弁欠損,MAPCA, 鎖骨下動脈起始異常)が合併する.本症の大動脈弓離断はA型でなく,全てB型である.本症の総動脈幹残異では肺動脈低形成,肺動脈の交差性起始,MAPCAをしばしば合併する.本症の心室中隔欠損に大動脈異常,血管輪が時に合併する.

  • 福嶌 教偉
    2017 年 33 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス

    小児心移植は,欧米では末期的心不全患者の外科的治療として定着している.我が国でも改正臓器移植法が2010年7月に施行され,臓器提供者の年齢制限がなくなり,小児からの脳死臓器提供も可能にあった.結果,2016年9月末までに15名の小児の脳死臓器提供があり,そのうち11名(6歳以下4名,10~14歳5名,15~17歳2名)が心臓提供で,成人からの提供を含めて19名の小児が国内で心臓移植を受けることができた.しかし,待機期間が長い我が国では,身体の小さな小児や,拘束型心筋症の小児は,未だに海外渡航しているのが現状である.海外渡航移植については患児・家族の経済的・精神的支援が問題となっているが,日本での小児の脳死は否認し,欧米の小児の脳死を肯定するという,倫理的に重大な問題を抱えており,日本の子供が心臓移植を受けることで,その国の子供のチャンスを奪っていることを忘れてはならない.小児重症心不全の治療に関わる医療者がもっと積極的にこの問題を解決することが必要である.

  • 平田 康隆
    2017 年 33 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス

    アメリカでは年間約400例以上の小児(18歳未満)に対する心臓移植が行われており,近年増加傾向にある.UNOSによる臓器配分システムが整備されており,医学的緊急度,体格,血液型,待機期間などに応じてコンピュータによって適切なレシピエント候補のリストが決定される.移植リスト登録後,移植までの待機期間は概ね2~3か月程度である.移植後の生存率は徐々に改善しており,近年では5年生存率は80%前後である.移植適応となる疾患で最も多いのは拡張型心筋症であるが,4割を先天性心疾患が占めており,その多くは単心室疾患で,フォンタン手術後の移植も増加傾向にある.ドナーの脳死の原因としては交通事故が最も多いが,虐待による脳死も含まれている.2011年にFDAによって小児用体外式VADのEXCORが承認されてからは,EXCOR装着後の移植も増加し,その成績は良好である.また,小児に使用可能な植込み型VADの開発も進んでいる.

  • 小垣 滋豊
    2017 年 33 巻 1 号 p. 24-35
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス

    小児心臓移植の予後は年代とともに改善傾向にあり,国際的には最近の5年生存率は約70%,日本人小児では90%を超えている.しかし,この短期的な予後改善は移植後急性期の生存率改善によるところが大きく,移植後の中長期的な罹病率や死亡率は必ずしも改善していない.したがって小児心臓移植後の遠隔期をいかに管理するかが重要な課題である.心臓移植後の長期的な管理において,免疫抑制療法と拒絶の管理を中心に,主たる移植後合併症である感染症,移植心冠動脈病変,腎機能障害,悪性腫瘍の監視と管理が重要である.加えて,小児においては,移植後の身体発育,精神運動発達,心理社会的機能の発達も重要であり,これらの評価と服薬アドヒアランスの問題を含めた移行期の管理が必要である.今後,多職種による総合的な移植後管理により,小児心臓移植後遠隔期の予後がさらに改善されることが望まれる.

  • 石戸(清水) 美妃子
    2017 年 33 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス

    心臓移植は,拡張型心筋症をはじめとする心筋症や,先天性心疾患の重症心不全に対し,可能な限りの内科的,外科的治療を行った上で,進行性で予後不良の場合適応となる.また,レシピエントが,移植後の免疫抑制剤をはじめとした治療を一生涯継続しなければならないことをふまえ,本人の理解が十分であると同時に家族等のサポート体制がしっかりしていなければ,適応とならない.かつ,心臓移植は,心臓機能の回復により,移植を受けた患者の生活の質が向上すること,生命予後が改善することを前提としている.つまり,悪性腫瘍や,その他の進行性の他臓器疾患により,予後不良が見込まれている場合や,心臓移植をしても生活の質の向上につながらないような,重症の神経筋疾患などでは適応とならない.では,どのような神経筋疾患では適応となり,あるいは適応とならないのか,本稿では,心臓移植の適応と,適応検討のプロセス,全身性系統疾患,なかでも神経筋疾患における心臓移植の適応と限界を含め,国内の現状もふまえて概説したい.

原著
  • 益田 博司, 小野 博, 阿部 淳, 小穴 愼二, 土田 尚, 小林 徹, 石黒 精, 今留 謙一, 伊藤 秀一, 賀藤 均
    2017 年 33 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス

    背景:大量ガンマグロブリン(IVIG)療法不応川崎病に対するインフリキシマブ(IFX)療法が増加している.

    目的:IFX療法の有効性,安全性を明らかにする.

    方法:2008年12月~2016年9月にIVIG不応川崎病に対して,IFX療法を行った55例を後方視的に検討した.

    結果:男34名(62%),月齢は,中央値31か月(4~131),IFX投与病日は,中央値は第10病日(7~24)であった.IFX療法は40例(73%)が3rd line以内に行った.投与48時間以内に38例(69%)が解熱した.10例(18%)でIFX療法後に追加治療を行った.IFX投与前後で白血球数,好中球(%),CRPなどの炎症マーカーが有意に低下した.IFX解熱例(n=38)と非解熱例(n=17)の2群間では,性,月齢,投与病日の有意差を認めなかった.冠動脈病変(CAL)は,IFX投与時にすでに7例で認め,投与後新たに認めた症例は4例で,そのうち1例で巨大瘤を認めた.有害事象は13例(23%)で,過去にIFXの投与経験がある1例でinfusion reactionを認めた.

    考察・結語:IFX療法はIVIG不応川崎病に対して有効な治療法である.CAL合併の頻度は過去のIFXの有効性を論じた報告と比べて同程度だった.重篤な有害事象は認めなかったが長期的な影響については今後も注視する必要がある.

症例報告
  • 佐藤 誠, 安孫子 雅之, 小田切 徹州, 松木 淳, 三井 哲夫
    2017 年 33 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は33歳女性.肺動脈閉鎖症,両大血管右室起始症で12歳時にFontan手術を受けた.経過良好でクリニック看護師として就労していた.入院2日前から易疲労感があり,呼吸困難感が増悪したため,入院当日の夜間に山形大学医学部附属病院へ救急搬送された.来院時の意識は概ね清明で,著明な湿性咳嗽を認めた.大葉性肺炎の診断でICUに入室し,循環維持目的にドブタミン,カルペリチドで治療を開始した.数時間でショックになったため容量負荷,ノルアドレナリンで治療を行ったが,不整脈から意識障害をきたし,気管挿管を要した.昇圧剤,容量負荷,ステロイド静注,一酸化窒素吸入に反応しない低血圧が遷延し循環不全に陥ったため,入院3日目にVA ECMOを導入した.ECMO導入後に入院時血液培養,喀痰培養の結果が判明し,緑膿菌市中肺炎,敗血症と診断した.心機能障害は徐々に改善し,敗血症性心筋症と診断した.入院14日目にECMOを離脱し,入院54日目に退院した.退院前頭部CTでは,低酸素や虚血の影響を示唆する所見を認めなかった.本報告は,緑膿菌市中肺炎,敗血症性ショックをきたしたFontan術後症例を救命し得た,初めての報告である.

  • 岡 秀治, 杉本 昌也, 梶濱 あや, 中右 弘一, 真鍋 博美, 東 寛
    2017 年 33 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス

    カテコラミン誘発多形性心室頻拍(Catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia: CPVT)は小児の突然死の原因の一つである.CPVTの初期治療としてはβ遮断薬が推奨されているが,それのみでは致死的なイベントを完全に防ぐことはできない.フレカイニドはIc群の抗不整脈薬であり,近年β遮断薬と同様にCPVT患者での運動誘発性の心室性不整脈の発症を減少させ,心イベントを予防すると報告された.フレカイニドに対する不整脈の改善は用量依存性であるとされているが,CPVT患者においてフレカイニド血中濃度と運動負荷心電図との直接的な関係をみた報告はない.我々は,8歳のCPVT患者に対して,β遮断薬とフレカイニドで治療を行い,治療効果判定として運動負荷心電図とフレカイニド血中濃度の測定を繰り返し行った.患者は十分な効果を得るために高用量のフレカイニド内服を要した.CPVT患者の治療に当たる際に,血中濃度と運動負荷心電図を繰り返し行うことはフレカイニドの効果判定に重要である.

  • 中島 光一朗, 黒嵜 健一, 神崎 歩, 辻井 信之, 帆足 孝也, 鍵崎 康治, 市川 肇, 白石 公
    2017 年 33 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス

    小児循環器領域において膜型人工心肺(ECMO)を使用する機会は増加している.そのため,治療方針決定にあたり詳細な解剖や血行動態評価が必要であり,診断手法としてマルチスライスCTの有用性は高い.

    今回,ECMO管理下にCTを施行した先天性心疾患の小児3症例を経験した.

    症例1:4か月女児.右側相同,右室性単心室,肺動脈狭窄,体肺動脈シャント手術後.シャント閉塞を来し緊急ECMO導入,肺血流再建治療の方針を決定するため造影CT検査を施行した.

    症例2:1か月女児.右室性単心室,肺動脈狭窄,肺動脈スリング,気管低形成.呼吸不全となり気管内挿管されたが低酸素血症が改善せず緊急ECMO導入した.肺動脈スリング解除手術のために造影CT検査施行した.

    症例3:5歳男児.修正大血管転位,ダブル・スイッチ手術後.間質性肺炎による呼吸不全のためECMO導入した.肺炎治療の効果判定およびECMO離脱方針決定のためECMO下でCT検査を施行した.

    いずれも周到な準備と専門スタッフの支援のもとに安全に施行することができ,治療方針の決定に重要な情報を得られた.有用で安全なECMO下CT検査には,検査プロトコールの確立,専門医の確保,日常からの準備が大切である.

  • 三木 康暢, 田中 敏克, 亀井 直哉, 佐藤 有美, 小川 禎治, 富永 健太, 藤田 秀樹, 城戸 佐知子
    2017 年 33 巻 1 号 p. 76-82
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス

    肺動静脈瘻(PAVM)は多くが遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)に合併する.我々はPAVMを契機に発見され,脳脊髄動静脈瘻の破裂により死亡したHHT小児2例を経験した.2例は4歳時に低酸素血症からPAVMと診断された.

    症例1: PAVMに対してコイル塞栓を4回行ったが効果は限定的であった.脳動静脈瘻を合併したが経過観察されていた.7歳時より繰り返す鼻出血と皮膚の毛細血管拡張を認め,遺伝子検査でendoglin遺伝子の変異が確認され,HHTと診断した.7歳5か月時に脳動静脈瘻が破裂し死亡した.

    症例2: 微小かつびまん性PAVMのためコイル塞栓適応外と判断した.脊髄動静脈瘻を合併したが経過観察されていた.皮膚の毛細血管拡張がありHHTが疑われたが,5歳6か月時に脊髄動静脈瘻が破裂し死亡した.

    HHTは全身の血管形成異常を起こし,敗血症が主な死因である.我々小児循環器科医はPAVMに注意が偏る傾向にあるが,死因として脳脊髄動静脈瘻も稀でなく,中枢神経,消化器等を評価し,各科と連携してのフォローが必要である.しかし本症例のように治療不能例や予期せぬ転帰をたどる例もあり,治療に難渋する疾患である.

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