日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
手掌多汗症状に対し胸腔鏡下胸部交感神経遮断術を施行したQT延長症候群の一例
熊本 崇田代 克弥飯田 千晶松尾 宗明
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2017 年 33 巻 4 号 p. 326-331

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抄録

先天性QT延長症候群(LQTS)のTorsade de Pointes(TdP)発生において運動,精神的興奮,ストレスの関与が知られており,特にLQT1, LQT2では交感神経興奮が強く関与するといわれている.そのためTdP予防としてβ遮断薬が第一選択薬として挙げられるが,内服コンプライアンスの問題などにより治療継続に難渋することを時に経験する.症例は14歳女児.明らかなLQTS,突然死,失神の家族歴はなく,小学校入学後より失神発作を繰り返していた.学校健診でQT延長を指摘され当科を紹介され受診し,遺伝子検査の結果QT延長症候群:LQT2の診断に至った.発作予防ためβ遮断薬を開始し,失神発作を起こすことなく経過していたが,運動耐容能低下のため10歳時に治療を自己中断された.その後失神発作を繰り返したため13歳より通院再開となり,運動制限ならびにβ遮断薬内服を開始した.失神発作を認めなくなったが,精神的に不安定となり不登校となり,また以前より本人が両側の手掌多汗症状に苦痛を感じていたため14歳時に胸腔鏡下胸部交感神経遮断術(endoscopic thoracic sympathectomy: ETS)を施行した.術後は多汗症状の改善が得られ,明らかな合併症を認めることなく経過した.加えて安静時の補正QT時間が570 msから511 msと改善したので報告する.

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© 2017 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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