孤立性片側肺静脈閉塞は非常に稀な先天性心疾患で,反復する喀血や肺炎などから診断に至る症例が多い.自然予後も様々であるため治療介入の是非や時期に苦慮する症例も存在する.今回自験3例を報告し,診断及び治療の留意点を検討する.
症例1は4歳女児で,1歳6か月より喀血と肺炎を繰り返し,造影CTで右肺静脈欠損と,肺血流シンチグラフィーで右肺血流減少を認め右肺静脈閉鎖が疑われた.右肺動脈楔入造影により閉鎖肺静脈腔を同定し,Sutureless法による肺静脈再建を行った.
症例2は4歳女児で,喀血で入院し,肺血流シンチグラフィーで左肺血流減少を認め,左肺動脈楔入造影により左肺静脈閉鎖と診断した.肺静脈近位端と左房との距離が離れていたので肺静脈再建適応外であった.
症例3は36歳女性で,生後4か月より肺炎と喀血を繰り返していた.肺血流シンチグラフィーで右肺動脈血流低下があり肺動脈楔入造影で右肺静脈閉鎖と診断した.年齢から肺静脈再建は断念し,右肺切除は本人も希望しなかった.
幼少期より反復する喀血や肺炎を呈する場合は,非常に稀な疾患であるが本症を鑑別にあげ,肺血流シンチグラフィーで片側肺の著しい血流低下があれば積極的に肺動脈楔入造影で確定診断を進めることが肝要である.幼児期までに診断し,かつ閉鎖肺静脈腔が解剖学的に修復可能であれば肺静脈再建は治療選択肢の一つとなり,右側肺静脈閉鎖においてはSutureless法は術後肺静脈狭窄を予防する有効な手術方法であると考えられる.
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