2018 年 34 巻 3 号 p. 121-127
小児心筋症は稀少疾患でありその予後は必ずしも良好ではない.重症例では補助人工心臓や移植が治療の選択肢となるが,合併症やドナー不足のためにその適応は限られたものとなる.心臓再生医療は,難治性心筋疾患に対するアンメットメディカルニーズとして期待が高まっており,最近のトランスレーショナルリサーチにより,成人患者の心筋障害に対する心機能改善や左室リモデリング抑制が実現化し,骨髄由来細胞,筋芽細胞,iPS細胞など様々な細胞を用いた前臨床試験が行われている.本稿では,心筋再生治療における最近の進歩として,細胞移植治療,筋芽細胞シート治療,iPS細胞由来心筋シート治療,ダイレクトリプログラミング手法を用いた治療を紹介する.同時に,本質的な心筋細胞の発生生物学的理解が重要であることを合わせて述べたい.