日本小児循環器学会雑誌
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34 巻 , 3 号
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巻頭言
特集
Review
  • 白石 公
    2018 年 34 巻 3 号 p. 88-98
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    先天性心疾患は,胎生期における心臓形態形成の過程が,胎児の遺伝子異常もしくは母体の環境要因により発症する多因子遺伝疾患と考えられている.心臓発生学を理解することは,先天性心疾患の形態診断,心疾患の病態把握,合併病変の予測,内科的治療方針の決定,外科手術手技の決定,長期予後の予測において大変重要である.本稿では,先天性心疾患の発症のメカニズムを理解するための胎生期の心臓形態形成のアウトラインについて解説する.近年目覚ましく進歩した,分子細胞生物学的手法および遺伝子改変マウスを用いた発生工学による先天性心疾患の発症メカニズムの知見は成書に譲ることとし,臨床医にとって基礎となる古典的な心臓形態形成の流れを中心に,図示してわかりやすく示す.

  • 山岸 敬幸
    2018 年 34 巻 3 号 p. 99-104
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    先天性心疾患は,心臓大血管の発生における特定の領域または段階の異常によって発症する.発生初期の胚は,心臓の原基を含めて左右対称の形態をしている.体の各臓器・組織が正常に左右非対称に形成されるためには,体の左右軸に関する情報が必要である.左右軸が決定される過程は,次のように説明される:Nodeのciliaが回転運動し,Nodal flowが生じることにより胚の右から左への分子の流れが発生する;その流れが胚の左側に左側形成機構を誘導し左側形成分子・遺伝子カスケード,すなわちTGF-βスーパーファミリーのNodal からLefty そして 転写因子Pitx2の発現に続く分子機構が活性化する.胚の左右軸の決定は正常な心臓形態形成にも必須であり,この分子機構が障害されると右側相同(無脾症候群),左側相同(多脾症候群)を含む内臓錯位症候群が発症し,単心室症,肺動脈閉鎖症などの重篤な先天性心疾患が合併する.左右軸決定の発生学のさらなる発展により,これら先天性心疾患の発症機構が解明されることが期待される.

  • 上砂 光裕
    2018 年 34 巻 3 号 p. 105-110
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    先天性心疾患の遺伝子異常として,まず染色体の異数性が認識された.その後FISH法やアレイCGH法など,より微細な染色体構造異常を同定する方法が開発されて,微細欠失症候群(22q11.2欠失症候群,Williams症候群など)やゲノムコピー数異常の先天性心疾患への関与が報告されてきた.一方,1990年代後半以降,家系の連鎖解析や染色体転座など染色体上の位置情報をもとに,ある一定の領域の遺伝子変異をサンガー法で確認する方法が行われてきた.そして,TBX5NKX2.5をはじめとした,転写因子を中心とした先天性心疾患の原因遺伝子の同定がなされてきた.しかし近年,次世代シークエンサーの登場により,全ゲノム(あるいは全エクソン領域)の遺伝子変異を解析する方法に切り替わってきた.この方法では,得られた大量の遺伝子変異から,いかにして疾患原因遺伝子変異にたどり着くかがポイントで,検体の選択を含めた解析の工夫が重要である.新しい遺伝子解析法によってさらなる先天性心疾患の原因遺伝子が発見されて,心臓発生の機序の解明につながることが期待される.

  • 廣野 恵一
    2018 年 34 巻 3 号 p. 111-120
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    心筋症とは,心筋の器質的あるいは電気的異常を有する多様な疾患群と定義され,原因はしばしば遺伝性である.主な病変が心臓にあるものを一次性心筋症,全身疾患の心筋病変を二次性心筋症と大別される.小児の心筋症では様々な遺伝子に様々な変異があり,遺伝的多様性が特徴である.遺伝形式も常染色体顕性,常染色体潜性,X連鎖性,ミトコンドリア性と様々である.遺伝性心筋症の特徴として,同一遺伝子内の異なる変異は異なる病型を示すこと,遺伝子変異の多くが稀で同一のホットスポットや変異を有することは稀であること,同一の家族内でも様々な浸透率を示すことが挙げられる.また,同一の遺伝子変異を有していたとしても,臨床経過,転帰は同一家族内でも様々である.家族を含めた遺伝学的検査を行うことが重要であり,今後のさらなる心筋症の病態解明が不可欠である.

  • 小垣 滋豊
    2018 年 34 巻 3 号 p. 121-127
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    小児心筋症は稀少疾患でありその予後は必ずしも良好ではない.重症例では補助人工心臓や移植が治療の選択肢となるが,合併症やドナー不足のためにその適応は限られたものとなる.心臓再生医療は,難治性心筋疾患に対するアンメットメディカルニーズとして期待が高まっており,最近のトランスレーショナルリサーチにより,成人患者の心筋障害に対する心機能改善や左室リモデリング抑制が実現化し,骨髄由来細胞,筋芽細胞,iPS細胞など様々な細胞を用いた前臨床試験が行われている.本稿では,心筋再生治療における最近の進歩として,細胞移植治療,筋芽細胞シート治療,iPS細胞由来心筋シート治療,ダイレクトリプログラミング手法を用いた治療を紹介する.同時に,本質的な心筋細胞の発生生物学的理解が重要であることを合わせて述べたい.

  • 門間 和夫
    2018 年 34 巻 3 号 p. 128-134
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    生体内動脈管の収縮を研究するため,ラット胎仔と新生仔を全身急速凍結法で固定し凍結ミクロトームで胸部を矢状面,前額面,横断面,または四腔断面で切り,0.5 mmごとに断面カラー写真を連続撮影した.胎仔の矢状面で胎生期主要血流路である右室漏斗部–主肺動脈–動脈管–下降大動脈が一断面に同じ太さで明示された.新生仔の矢状面で生後30分の動脈管の管状収縮が明示され,出生後90分で速やかに管状の狭窄を経て閉鎖した.動脈管索は生後3日で著明な短縮を生じた.胎生期動脈管の薬剤性収縮は新生仔の動脈管収縮と異なる形態を示した.即ちインドメサシンを親ラットに経口投与すると4時間後の中央部に強い砂時計型収縮,8~24時間後の限局性の大動脈側の膜状収縮が明示された.この特徴ある胎生期動脈管収縮は全て薬剤による収縮,即ちインドメサシンなど鎮痛解熱剤,ベタメサゾンなどステロイドホルモン,グリベンクラミドなどのスルホニル尿素薬によるラット胎仔動脈管収縮で観察された.胎仔動脈管収縮24時間持続後の四腔断面には右室の内腔狭小化と壁肥大,左室の拡張と肥大,心嚢液貯留が明示された.

原著
  • 加藤 基, 渡邊 彰二, 野村 耕司, 黄 義浩, 木南 寛造, 小川 潔, 星野 健司, 菱谷 隆, 河内 貞貴, 川嶋 寛, 田波 穣
    2018 年 34 巻 3 号 p. 135-142
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    背景:術後及び先天性乳び胸腹水は入院期間の延長や成長障害だけでなく致死的となることがあり,新たな治療の開発は急務である.リンパ管疾患の病態理解により乳び胸腹水は中枢リンパ管系統の破綻が原因であり,体表リンパ管疾患と類似していることが明らかとなった.

    方法・対象:2014年4月~2016年10月の間に当科で治療を行った生後25日から2歳の連続した12例を対象とし,後方視的検討を行った.いずれも保存加療で難治であり病態に合わせてリンパ管造影法またはリンパ管静脈吻合術を行った.

    結果:4例で胸水・腹水は完全に停止した.3例は追加で治療を要したものの,部分的に治療効果が確認できた.5例は経過中に呼吸不全などをきたし死亡した.

    考察:われわれは体表リンパ管疾患の治療で育んだリンパ流の評価・再建法を応用した低侵襲外科治療を行った.重症例では未だ治療効果は限られているが,リンパ流の改善という病態に立脚した新たな治療の可能性が示唆された.過渡期にあるリンパ外科的治療は今後さらなる発展が期待される.

  • 石井 卓, 嘉川 忠博, 矢崎 諭, 小林 匠, 吉敷 香菜子, 稲毛 章郎, 浜道 裕二, 上田 知実, 和田 直樹, 安藤 誠, 高橋 ...
    2018 年 34 巻 3 号 p. 143-152
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    背景:本研究の目的は,成人期TCPC(total cavopulmonary connection)の中期成績を小児期TCPCと比較することで明らかにするとともに,合併症のリスク因子および手術による血行動態への影響を検討することである.

    方法:当院でTCPCを行った症例のうち,手術時18歳以上の25症例を対象とし,診療録を用いて後方視的に検討を行った.また,比較対象として,当院でTCPCを行った小児例(5歳未満,75例)を用いた.

    結果:周術期合併症を13例に認めたが,周術期死亡は1例のみだった.術後の累積生存率は5年時96.0%で,小児期TCPCと有意差を認めなかった.一方,退院後の心血管イベントは小児期TCPCと比べて有意に高かった.観察期間内における手術後の総死亡は3例で,術前の心室拡張末期圧と平均肺動脈圧の上昇が共通していた.退院後の心血管イベントは心房内臓錯位症候群症例で頻度が高かった.また,周術期,退院後ともに成人期TCPC症例では上室頻拍の頻度が小児例に比べて高かった.手術前後では,酸素飽和度の有意な上昇と心胸郭比の有意な改善が見られた.一方,手術後の心係数は平均1.9 L/min/m2と低値であった.

    結論:成人期TCPCの生存率は良好で,チアノーゼの改善と心拡大の改善が得られるため,成人期であってもTCPCによるFontan手術を行う意義はある.ただ,上室頻拍をはじめとした術後の合併症頻度が高いことや心拍出量低下などは念頭におく必要がある.

症例報告
  • 青田 千恵, 山川 勝, 宮越 千智, 鶴田 悟
    2018 年 34 巻 3 号 p. 155-159
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2018/12/25
    ジャーナル フリー

    挙児希望のある致死性の遺伝性不整脈Inherited Primary Arrhythmia Syndromes (IPAS)合併女性に対し安全な妊娠分娩管理を行うことは重要であるが,その分娩管理方針は未だ確立していない.IPAS合併母体妊娠分娩管理方針の根拠となる臨床情報を収集,蓄積しすることを目的とし,当院周産期センターにおいて2008~2016年に入院したCPVT合併母体3例(疑い1例)6出産,LQT2合併母体1例1出産について診療録を後方視的に検討した.全例小児循環器科医,産科医,麻酔科医,循環器内科医,新生児科医の連携による集学的妊娠分娩管理を計画・実施し,1例を除きβ-blocker内服下に在胎37週から38週台での予定帝王切開を選択し,母児共に重大な心イベントなく管理可能であった.IPAS合併母体の妊娠出産についてはまだ症例数が少なく,疫学的情報および症例の集積は重要であると考える.

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