日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
4D flow MRIを用いた血行動態評価が有用であったTCPC術後導管屈曲,蛋白漏出性胃腸症の1例
藤田 周平山岸 正明宮崎 隆子前田 吉宣板谷 慶一谷口 智史本宮 久之星野 真介宗村 純平夜久 均
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2018 年 34 巻 4 号 p. 197-204

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抄録

Four-dimensional flow magnetic resonance imaging (4D flow MRI)による血流可視化によって3次元的な血流の拍動がとらえられ,さらに3次元血流速度分布の流体力学的な解析はwall share stressやflow energy loss等の心血管系への力学的なストレスを定量可能とし,先天性心疾患の治療方針決定への応用が期待される.今回心外導管型Fontan術後の導管の屈曲と蛋白漏出性胃腸症(protein-losing enteropathy: PLE)のため循環動態の把握が治療方針に関わる症例に対して4D flow MRIでの血流解析を行ったため報告する.症例は,右室型単心室,肺動脈閉鎖の14歳男児であった.2歳時に心外導管total cavopulmonary connection (18 mm expanded polytetrafluoroethyleneグラフト)を施行し,術後3年目にPLEを発症,ステロイド依存状態となった.CTで心外導管中央に石灰化を伴う屈曲を認め,再手術適応評価のため精査を行った.カテーテル検査では屈曲部での圧較差は認めず,平均肺動脈圧とRVEDPの上昇を認め,等容拡張期の圧低下の遅れを認めた.4D flow MRIでは導管屈曲部および心室内での血流加速はなく,flow energy lossは有意でなかった.この結果より導管交換のみではPLE改善が見込めないことが示唆され,心室の拡張障害に対する内科的治療を先行する方針となった.

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© 2018 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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