2019 年 35 巻 1 号 p. 38-42
川崎病は日常診療で遭遇する機会が多く,合併症として冠動脈拡大・瘤の診断は重要である.一方,冠動脈拡大・瘤を示す疾患には,左冠動脈肺動脈起始症,冠動脈瘻,左冠動脈閉鎖症などの先天性冠動脈異常もある.症例は6歳女児で,歳時に川崎病に罹患し,前医に入院した.免疫グロブリン大量療法を施行され,速やかに解熱したが,初回心エコー図検査時より右冠動脈拡大があり,縮小することなく残存した.川崎病性右冠動脈拡大,軽症僧帽弁閉鎖不全,動脈管開存症疑いとして前医で外来管理されていた.5歳時より全力疾走時に胸痛を訴えるようになった.運動負荷心電図検査を施行したところ,自覚症状はなかったが,V3–6誘導で0.1–0.2 mVの下降型ST低下が認められ,精査加療目的で当院紹介された.当院で冠動脈造影CT検査を施行し,左冠動脈肺動脈起始症と確定診断した.術前の精査では左室前側壁領域の軽度壁運動低下を認め,左冠動脈移植手術を行った.今回,川崎病性右冠動脈拡大と診断され,無治療経過観察されていた左冠動脈肺動脈起始症の1小児例を経験した.急性期川崎病診療のピットフォールとして,注意喚起すべきと考えたので報告する.