日本小児循環器学会雑誌
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35 巻 , 1 号
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巻頭言
Review
  • 長嶋 光樹, 上松 耕太
    2019 年 35 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー

    Fontan循環は,心室による駆動のない肺循環と心室による駆動のある体循環とが直列になっており,肺循環を維持するために高い中心静脈圧が必要となる非生理的な循環方式である.このFontan循環を良好に獲得するためには,低い肺血管抵抗を維持することが重要である.このことは,Fontan手術前であろうが,術後であろうが共通の大事な条件となる.肺血管抵抗を低く維持するために,術直後の鎮静方法,呼吸管理,水分管理や薬物投与,心不全管理,カテーテル治療,などが周術期に総合的に集約的に行われている.Fontan術後の周術期管理を良好に行うには,この特殊なFontan循環を充分理解し,周術期に起こりうるFontan術後の特異的な多くの諸問題に対処していかなければならない.

  • 鈴木 博
    2019 年 35 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー

    QT短縮症候群(short QT syndrome: SQTS)は遺伝性の致死的不整脈である.2000年に初めて報告され,心電図上のQT短縮を特徴とし,心室細動や心房細動などの不整脈を来す.臨床像は未だ不明な点も多いが,10~20歳台の突然死が多く報告されている.よって小児期での診断が重要であり,学校心臓検診でも問題になる.2013年の三大陸合同のExpert consensus statement以降は,QTcが一定基準以下のものは,遺伝子異常も家族歴もない無症状例もSQTSと診断される.一般成人集団よりQT短縮例を抽出する検討では,SQTSの診断基準を満たす例はあったが無症状で予後も良いと報告されている.我々の学校心臓検診の検討でもSQTSは存在したが,有症状例はなかった.SQTSの中でも高リスクの既報例と検診・健診などで抽出される低リスク例には臨床像に大きな隔たりがあり,SQTSのリスク層別化が重要となる.そこで我々は,有症状のSQTS既報例と学校心臓検診で抽出された無症状で家族歴もないQT短縮例の心電図を比較し,高リスクのSQTS例の鑑別が可能か検討した.さらにSQTSのリスク層別化を進めるには無症状のSQTS小児例の中長期予後を知ることが求められる.

原著
  • 榎本 淳子, 水野 芳子, 岡嶋 良知, 川副 泰隆, 森島 宏子, 立野 滋
    2019 年 35 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー

    背景:現在移行期支援が注目され,その課題のひとつに就業が挙げられる.就業は男女で状況が異なるが,日本において男女別に患者の就業状況を明らかにした研究はほとんどない.そこで本研究では成人先天性心疾患患者の就業状況とその状況に影響を及ぼす要因を男女別に検討する.

    方法:先天性心疾患患者193名(平均年齢:男33.62歳・女32.69歳,男性89名:学生は除く)に,就業状況,社会的属性(婚姻状態,教育歴),疾患状況(疾患名,疾患重症度,手術回数など),就業支障評価,生活の質(QOL: Linear Analog Scale for quality of life),生活満足度(SWLS: Satisfaction with Life Scale)を問う質問紙調査を実施した.

    結果:国勢調査による同世代の成人と比較して,男女とも未就業(男13名:14.6%,女13名:12.5%)が有意に多く(p<0.01),さらに男性は常勤就業者が有意に少なかった(p<0.01).また未就業患者で「(疾患のため)仕事ができない」と回答したのは男女1名ずつで,多くの患者は就業可能と考えていた.未就業患者はQOL, SWLSともに有意に低く,未就業の背景要因としては,男性は年齢が若いこと,女性は疾患が重いことであった(それぞれp<0.05).

    結論:患者は就業可能と考えているにもかかわらず未就業者が多く,疾患を起因として就業に不利益を被っていることが考えられる.さらにその状況にある患者は生活の質,満足感が低く,就業に課題を抱えている状態であることが明らかとなった.

  • 粒良 昌弘, 新居 正基, 高橋 健, 瀧聞 浄宏, 豊野 学朋, 岩島 覚, 井上 奈緒, 石垣 瑞彦, 佐藤 慶介, 芳本 潤, 金 成 ...
    2019 年 35 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー

    背景:左心低形成症候群(HLHS)と右側心房相同(RAI)において,房室弁逆流の合併はその予後に大きな影響を与える.

    方法:1) HLHS・RAI群:32例(HLHS 15例,RAI 17例); 2)正常小児群:53例.IE-33/matrix probeを用いて心尖部四腔断面における三尖弁および共通房室弁のX-plane(弁輪の中央を通る四腔断面とこれに直交する断面)を記録.弁輪のtrackingにより二方向の弁輪径の経時変化を計測,弁輪面積を算出し2群間で比較した.心周期弁輪面積変化は収縮期に縮小する:1型;収縮期に拡大する:2型;面積変化の小さい:3型に分類した.また逆流の程度により軽度逆流群と高度逆流群に分類し,弁輪面積変化との関連を解析した.

    結果:正常群:1型22例(42%),2型24例(45%),3型7例(13%)に対し,HLHS・RAI群:1型4例(13%),2型7例(22%),3型21例(65%)と,正常群に対しHLHS・RAI群に3型を多く認めた(p<0.01). 逆流による分類では,軽度逆流群16例,高度逆流群は16例で,高度逆流群で3型を多く認めた(14例,88%).

    結論:HLHS・RAI群では三尖弁輪機能が低下しており,弁逆流を発生する一機序となっている.

症例報告
  • 津田 恵太郎, 岸本 慎太郎, 鍵山 慶之, 籠手田 雄介, 須田 憲治
    2019 年 35 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー

    川崎病は日常診療で遭遇する機会が多く,合併症として冠動脈拡大・瘤の診断は重要である.一方,冠動脈拡大・瘤を示す疾患には,左冠動脈肺動脈起始症,冠動脈瘻,左冠動脈閉鎖症などの先天性冠動脈異常もある.症例は6歳女児で,歳時に川崎病に罹患し,前医に入院した.免疫グロブリン大量療法を施行され,速やかに解熱したが,初回心エコー図検査時より右冠動脈拡大があり,縮小することなく残存した.川崎病性右冠動脈拡大,軽症僧帽弁閉鎖不全,動脈管開存症疑いとして前医で外来管理されていた.5歳時より全力疾走時に胸痛を訴えるようになった.運動負荷心電図検査を施行したところ,自覚症状はなかったが,V3–6誘導で0.1–0.2 mVの下降型ST低下が認められ,精査加療目的で当院紹介された.当院で冠動脈造影CT検査を施行し,左冠動脈肺動脈起始症と確定診断した.術前の精査では左室前側壁領域の軽度壁運動低下を認め,左冠動脈移植手術を行った.今回,川崎病性右冠動脈拡大と診断され,無治療経過観察されていた左冠動脈肺動脈起始症の1小児例を経験した.急性期川崎病診療のピットフォールとして,注意喚起すべきと考えたので報告する.

  • 三浦 文武, 山本 洋平, 嶋田 淳, 北川 陽介, 敦賀 和志, 大谷 勝記, 高橋 徹, 米坂 勧, 加藤 哲子, 伊藤 悦朗
    2019 年 35 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー

    Eisenmenger症候群(ES)に褐色細胞腫(pheochromocytoma: PCC)を合併した稀な症例を経験した.症例は女性で,新生児期に両大血管右室起始(double outlet right ventricle: DORV)と診断したが,乳児期よりESの病態を呈した.30歳時にPCCの合併を診断した.外科的切除は周術期のリスクから適応外とされた.32歳時に心不全,腎不全のため死亡した.病理解剖でDORV,高度の肺血管閉塞性病変,左副腎のPCC,膀胱などの多発性のパラガングリオーマ(paraganglioma: PGL), チアノーゼ性腎症を認めた.近年,PCC/PGL発症のリスク因子として低酸素が報告されている.本症例でもDORVやESがPCC/PGLの誘因になった可能性がある.PCC/PGLの症状は心疾患の症状とオーバーラップしており,先天性心疾患患者のPCC/PGLの診断は遅れがちになりやすい.さらに本症例ではESによるPCCの治療制限,PCCによる高血圧と頻脈の心血行動態への悪影響など治療と管理にも難渋した.先天性心疾患の合併症としてPCC/PGLも念頭に置くべきである.

  • 前田 登史, 藤原 慶一, 吉澤 康祐, 坂﨑 尚徳
    2019 年 35 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2019/04/06
    ジャーナル フリー

    僧帽弁形成術の1つとしてグルタールアルデヒド処理自己心膜による延長術があるが,小児例での報告は少なく,また遠隔期成績は不明である.後尖低形成による先天性僧帽弁閉鎖不全2例(1歳4か月,5か月)に対して,0.625%グルタールアルデヒド処理(5分)自己心膜による後尖延長術を行った.いずれもP2を中心とする後尖低形成を主病変とする中等度以上の逆流であった.後尖延長はP1からP3にかけてほぼ全長に行った.術直後に逆流はmild, noneに減少した.9年,3年の遠隔期には,自己心膜は軽度に肥厚し,可動性の若干の低下は認めるものの,逆流はtrivial, noneで,狭窄所見は認めていない.乳児例においても,僧帽弁後尖の低形成に対しては,グルタールアルデヒド処理自己心膜による後尖延長術は有用な術式の1つである.

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