日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
造影剤腎症を発症し持続血液濾過透析を導入した成人チアノーゼ性先天性心疾患の1例
鈴木 康太小田切 徹州藤井 隆高橋 辰徳安孫子 雅之三井 哲夫
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2020 年 36 巻 2 号 p. 166-172

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抄録

造影剤腎症(contrast-induced nephropathy: CIN)は,脱水,重症心不全,造影剤投与前の腎機能障害や利尿薬投与,貧血などがリスクファクターとされている.CINの腎機能障害は可逆的であり,透析を要する例はまれである.一方,チアノーゼ性先天性心疾患(cyanotic congenital heart diseases: CCHD)ではしばしばチアノーゼ腎症(cyanotic nephropathy: CN)や相対的貧血を合併し,さらに難治性心不全に対して利尿薬投与や水分制限を必要とする機会が多い.しかし,CCHD患者でCINの発症リスクや発症時の重症度が高いか否かは明らかではなく,造影剤使用の危険性に関して十分な検討がなされていないのが現状である.症例は30歳女性であった.純型肺動脈閉鎖症,Blalock–Taussig シャント術後でチアノーゼが残存し,15歳時に腎生検でCNと診断された.呼吸器感染症での入院を契機に,慢性心不全の急性増悪で利尿薬やmilrinoneの投与を要した.心不全改善後に血行動態評価のため心臓カテーテル検査を施行した.検査翌日から乏尿となり,血清クレアチニンが検査前の0.79 mg/dLから最大3.86 mg/dLまで上昇し,胸腹水貯留,代謝性アシドーシスが遷延したため,CINの診断で持続血液濾過透析を8日間施行した.成人CCHD患者,特にCN合併例ではCIN発症リスクのみならず,CIN発症時の重症度がより高くなる可能性があり,造影剤使用の際は適応や使用量を含めてより慎重に検討する必要がある.

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© 2020 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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