日本小児循環器学会雑誌
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36 巻 , 2 号
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巻頭言
Review
  • 古道 一樹
    2020 年 36 巻 2 号 p. 97-106
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    先天性心疾患は,その臨床的重要性にもかかわらず,大多数の症例の遺伝的病因は未知であり,いわゆる「多因子性」疾患と考えられてきた.心臓の形態は,複雑な3次元構造を構築するために必要となる,時間的,空間的な遺伝子制御を受けて発生する.先天性心疾患の病因を解明するために,心血管形態形成における個々の部位特異的な発生に焦点を当てたアプローチが重要となる.近年の目覚ましい分子生物学の発展に伴い,遺伝子改変動物,さらには幹細胞を用いた研究が精力的に行われ,心臓の各コンポーネントの発生は複数種の心臓前駆細胞が寄与することが明らかとなり,この20年間で心臓発生および疾患発症メカニズムに関する新たな知見が急速に集積された.このレビューでは,小児循環器疾患の近年の基礎的知見の発展と,今後の展望について記載する.

  • 松久 弘典
    2020 年 36 巻 2 号 p. 107-115
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    小児呼吸循環不全患者に対する体外式膜型人工肺装置(ECMO)の歴史は古く,確立された補助手段である.その対象は心疾患症例の急性循環不全のみならず,種々の呼吸器感染症や敗血症,蘇生補助装置としても適応は拡大している.また重度の心機能低下例や高度低酸素血症例に対してもカニュレーションの工夫により一定の効果を得ている.しかしながら,右心バイパス症例のように依然救命困難な疾患群は存在し,比較的合併症のリスクが高い治療法であるため,救命例においてもしばしば神経学的合併症などが問題となる.ECMOによる更なる救命率の向上と合併症回避のためには,近年の成績の概要,新たな知見を集積するとともに,多職種を交えた導入シミュレーション等の体制整備が必須である.

  • 佐野 俊二
    2020 年 36 巻 2 号 p. 116-120
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    私の留学時代の恩師Sir Brian Barratt-Boyes(超低体温停止法を開発,ホモグラフトを世界で最初に大動脈弁置換に使った)は良き心臓外科医であると同時にacademic surgeon, innovative surgeonであれと説いた.もう一人の恩師Roger Meeは,LV training, Double switch手術,TGAに対するTrapdoor法など多くの新しい手術法を次々と開発した.2人の偉人の薫陶を受けて育った私は,自分自身も世界に発信する新しい治療法を考えるようになった.1993年に岡山大学に帰り,多くの複雑心奇形症例の手術症例に恵まれ,多くの成功と同時に多くの命を失った.命を失った症例から多くのことを学び,それが新しい手術法,治療法を生み出す原動力になった.

    若い人達も学術的で革新的なマインド(mind)をもち,日本発の新しい手術法,治療法の開発をしてもらいたい.

  • 門間 和夫
    2020 年 36 巻 2 号 p. 121-127
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    Bis-diamineはラットに強力なteratogenで高率にヒト染色体22q11欠失症候群類似の先天性心疾患と胸腺欠損を生じるが,作用機序の詳細は不明である.Bis-diamine 200 mgを妊娠9日と10日のラット40匹に胃内注入し,満期21日目に胎仔を全身急速凍結法,凍結ミクロトーム,実体顕微鏡(Wild M400)を用いて0.5 mm毎の胸部横断面を連続写眞で記録した.330胎仔に括弧内の率で次の先天性心疾患が生じた.各種のFallot四徴症(68%),総動脈幹残遺(18%),大動脈弓離断(2%)などである.これらの心疾患には胸腺欠損(70%)乃至低形成(30%),右側大動脈弓,鎖骨下動脈起始異常,血管輪などが合併した.前著ではこれらの胎生期先天性心疾患の生体内断面図を染色体2q11.2欠失症候群の胎児心エコーモデル図譜として提示したが,胸腺低形成,血管輪と大動脈弓離断について紙面の都合で図示不充分であったので,ここに追加提示する.

原著
  • 岡川 浩人
    2020 年 36 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    背景:2016年,学校心臓検診のガイドラインが改定され,接合部調律は全例要精査,心室拍数80回/分を超える場合には上室頻拍に準じた管理とされた.しかし,学校心臓検診における接合部調律の頻度,心拍数についての十分なデータはなく,ガイドラインの変更が学校心臓検診の現場に与える影響は不明である.

    方法:大津市学校心臓検診対象者の7,108人において,接合部調律の頻度,心拍数について検討した.

    結果:接合部調律の頻度は,小学校1年生で55人(2.4%),小学校4年生で73人(3.0%),中学校1年生で76人(3.3%)であった.平均心拍数は,それぞれ79.2±7.9回/分,76.7±8.6回/分,72.5±9.9回/分であった.

    結論:学校心臓検診においては,接合部調律は従来想定されているよりも頻度は高い.心拍数もガイドラインで想定されている30~60回/分よりも速く,年齢が小さいほど顕著であった.

  • 宗内 淳, 落合 由恵, 渡邉 まみ江, 杉谷 雄一郎, 松岡 良平, 土井 大人, 江崎 大起, 山本 順子, 横田 千恵, 大村 隼也, ...
    2020 年 36 巻 2 号 p. 133-142
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    背景:新生児・乳児早期の動脈管開存症(PDA)に対するカテーテル治療の有効性と安全性について検討する.

    対象と方法:新生児・乳児早期(生後6か月以下)の症候性PDA25例中,カテーテル治療15例と外科治療10例に関して,臨床経過と合併症に関して後方視的に比較検討した.

    結果:日齢115日(6~212),体重4.20 kg (1.62~8.79),肺体血流比3.54 (1.06~8.80),平均肺動脈圧28 mmHg (12~60),PDA径4.3 mm (1.1~8.8)であり2群間差はなかった.カテーテル治療群の使用デバイスはAmplatzer™ Duct Occluder (ADO) 8例,ADO-II 1例,Amplatzer™ Vscular Plug-II (AVP-II) 6例であった.カテーテル治療群では術前リスクの高い症例(人工呼吸管理4例,肺出血3例など)が目立った.カテーテル治療群のうち2例は技術的困難なため断念し外科治療となった.重大合併症はカテーテル治療群4例(デバイス脱落1例,輸血2例,術後肺炎1例)に対して外科治療群3例(乳び胸1例,呼吸不全1例,大動脈縮窄1例)であり,2群間に有意差はなかった.

    結語:新生児・乳児早期PDAに対するカテーテル治療は外科治療と遜色ない有効性・安全性であり,高リスクな症例に対しても実施することが可能である.カテーテル治療と外科治療の利点を考慮し慎重な適応選択が望ましい.

症例報告
  • 杉谷 雄一郎, 宗内 淳, 岩屋 悠生, 川口 直樹, 白水 優光, 岡田 清吾, 飯田 千晶, 渡邉 まみ江, 宮城 ちひろ, 安東 勇介 ...
    2020 年 36 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    近年,単心室・総肺静脈還流異常症(TAPVR)の垂直静脈狭窄に対して,新生児早期の手術を回避すべく姑息的ステント留置が行われている.垂直静脈ステント留置に伴うバルーンエントラップメント2例を経験した.【症例1】在胎40週5日,出生体重3,552 g.単心室,肺動脈狭窄,上心臓型TAPVRの男児.左上大静脈へ還流する垂直静脈狭窄のため出生当日肺うっ血を認め,左内頚静脈よりステント(Express SD® 6 mm)を留置した.ステントにウエストが残存した状態でバルーン回収を試みたが抜去困難となった.【症例2】在胎39週4日,出生体重2,882 g.左心低形成症候群,上心臓型TAPVRの女児.生後1日目,右上大静脈へ還流する垂直静脈の狭窄に右内頚静脈よりステント(Express SD® 8 mm)を留置した.ステントのウエストが残存した状態でバルーン回収を試みたが難渋した.いずれの症例もシースやカテーテルの操作で抜去することができた.垂直静脈狭窄へのステント留置の際は,バルーンエントラップメントを憂慮すべき合併症として認識する必要がある.

  • 河内 遼, 東 浩二, 佐藤 純一, 中島 弘道, 青墳 裕之
    2020 年 36 巻 2 号 p. 152-156
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    先天性肺静脈狭窄ならびに閉鎖症は極めてまれな疾患である.学校検診での胸部単純写真の異常陰影を主訴に来院し,心臓カテーテル検査をはじめとする各検査によって先天性肺静脈狭窄症ならびに閉鎖症の診断に至った1例を経験した.右上肺静脈は左房へ開口せず,拡張し蛇行しながら右下肺静脈と合流し,anomalous unilateral single pulmonary vein(AUSPV)が認められた.先天性肺静脈狭窄症とAUSPVを合併した報告は今までなく本症例が初報告となる.左右肺血流不均衡は認めるものの,肺高血圧の合併はなく無治療で経過観察を行っている.

  • 伊藤 裕貴, 鈴木 博, 渡辺 健一, 羽二生 尚訓, 星名 哲, 白石 修一, 高橋 昌, 齋藤 昭彦
    2020 年 36 巻 2 号 p. 159-165
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    Marfan症候群(MFS)に心室中隔欠損(VSD)を合併し,急速に心不全が進行し,手術前後で心機能が低下した乳児例を経験した.症例は2か月の女児で,VSDによる高肺血流性心不全と診断され,当院を紹介となった.家族歴,身体所見からMFSが疑われた.高肺血流に心機能低下も伴うため,段階的に修復術を施行された.肺動脈絞扼術直後と心内修復術直後にそれぞれ心機能は低下したが,徐々に回復した.3歳時に水晶体脱臼を認め,父がMFSであることから改訂Ghent基準を満たした.MFSは潜在的な心機能障害を有する可能性があり,治療介入が必要な先天性心疾患を合併する例では,術前の心不全の進行や術後管理に注意し,慎重な経過観察や治療戦略を考慮すべきである.

  • 鈴木 康太, 小田切 徹州, 藤井 隆, 高橋 辰徳, 安孫子 雅之, 三井 哲夫
    2020 年 36 巻 2 号 p. 166-172
    発行日: 2020/06/01
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    造影剤腎症(contrast-induced nephropathy: CIN)は,脱水,重症心不全,造影剤投与前の腎機能障害や利尿薬投与,貧血などがリスクファクターとされている.CINの腎機能障害は可逆的であり,透析を要する例はまれである.一方,チアノーゼ性先天性心疾患(cyanotic congenital heart diseases: CCHD)ではしばしばチアノーゼ腎症(cyanotic nephropathy: CN)や相対的貧血を合併し,さらに難治性心不全に対して利尿薬投与や水分制限を必要とする機会が多い.しかし,CCHD患者でCINの発症リスクや発症時の重症度が高いか否かは明らかではなく,造影剤使用の危険性に関して十分な検討がなされていないのが現状である.症例は30歳女性であった.純型肺動脈閉鎖症,Blalock–Taussig シャント術後でチアノーゼが残存し,15歳時に腎生検でCNと診断された.呼吸器感染症での入院を契機に,慢性心不全の急性増悪で利尿薬やmilrinoneの投与を要した.心不全改善後に血行動態評価のため心臓カテーテル検査を施行した.検査翌日から乏尿となり,血清クレアチニンが検査前の0.79 mg/dLから最大3.86 mg/dLまで上昇し,胸腹水貯留,代謝性アシドーシスが遷延したため,CINの診断で持続血液濾過透析を8日間施行した.成人CCHD患者,特にCN合併例ではCIN発症リスクのみならず,CIN発症時の重症度がより高くなる可能性があり,造影剤使用の際は適応や使用量を含めてより慎重に検討する必要がある.

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