日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
混合型総肺静脈還流異常症修復術後に遺残垂直静脈を介する症候性門脈体循環シャントを来した1例
宍戸 亜由美長谷川 智巳亀井 直哉林 賢松久 弘典大嶋 義博田中 敏克
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2020 年 36 巻 3 号 p. 263-268

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抄録

機能的単心室を有する無脾症児の総肺静脈還流異常症(TAPVC)に対する修復術では,肺静脈還流の形態により術後肺静脈閉塞のリスクを考慮して,垂直静脈を処理せずに修復する術式を選択する場合がある.今回,混合型TAPVC修復術後の遺残垂直静脈を介して症候性門脈体循環シャント(PSS)を来した稀な症例を経験したので報告する.症例は混合型TAPVCの無脾症男児で,日齢18にTAPVC修復術を施行した.左上大静脈に還流する右肺静脈と,門脈に還流する左肺静脈を別々に心房に吻合し,左右の垂直静脈はいずれも放置した.術後に肝逸脱酵素上昇,凝固能異常,低血糖,高アンモニア血症を認め,遺残垂直静脈をシャント血管とする症候性PSSと診断した.症状は保存的治療で改善したが,将来,Fontan循環に向かう血行動態への影響を考慮し,遺残垂直静脈絞扼術を施行した.門脈への異常還流を伴う混合型TAPVCでは,単心室血行動態において遺残垂直静脈を介したPSSを来しうるため,これを念頭においた術前精査や術式検討,周術期管理が必要である.

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