日本小児循環器学会雑誌
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症例報告
全エクソン解析によりCACNA1C遺伝子バリアントが同定された心外合併症のない(非Timothy型)QT延長症候群(LQT8)
青木 晴香鉾碕 竜範渡辺 重朗中野 裕介岩本 眞理相庭 武司
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2020 年 36 巻 4 号 p. 334-343

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抄録

Long QT syndrome type 8 (LQT8)は心筋CaチャネルのαサブユニットをエンコードするCACNA1C遺伝子異常が原因で,心電図上QT延長に加えて,合指,先天性心疾患,精神発達遅滞など多臓器に所見を認めるTimothy症候群が知られている.今回我々は心外合併症のない非Timothy症候群型LQT8の親子例を経験したので報告する.症例は18才男性,小学校1年生の学校心臓検診でQT延長を指摘され,9歳時に遺伝子検査を提出したが,LQT1~3の遺伝子変異は認めなかった.18歳時の運動負荷心電図で機能的2 : 1房室ブロックを認めたことを契機に改めて全エクソン遺伝子解析を実施したところ,本患者と父親にLQT8として既報のCACNA1C遺伝子バリアントが同定された.本患者に対してプロプラノロール,メキシレチン,ベラパミルの薬剤負荷試験を施行し,メキシレチン投与後にQT延長の改善を認めた.LQT8に対する明確な治療指針はないが,本症例ではメキシレチンの有効性が示唆された.LQT1~3の遺伝子変異が同定されなかった症例でも,QT延長に加え機能的2 : 1房室ブロックやT wave alternansを認めた場合はLQT8の可能性を疑う必要がある.

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© 2020 特定非営利活動法人日本小児循環器学会
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